日露首脳は次のステージへ上がれるのか?

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ロシアを動かすのは至難の業


201692日 古川 光輝



安倍首相の本気度



 「問題の前進には首脳同士の率直なやりとりが不可欠だ。首相は強い思いで議論に臨む」

この発言は831日に菅官房長官が記者会見で述べた言葉である。どうやら安倍首相は本気でロシアに向き合っているらしい。


 いよいよ日露首脳会談が行なわれる。安倍首相は、今日(92日)からロシアのウラジオストクで開催される国際経済フォーラム「東方経済フォーラム」に出席するのに合わせて、プーチン大統領と日露首脳会談を行う予定。会談は5月のロシア南部ソチ以来で約4カ月ぶりになる。

日露首脳
 


 前回ソチで行なわれた会談では日本側が新たな経済支援策を提示し、国民を驚かせた。「8項目の経済協力プラン」は日本側が大きく踏み込み、経済協力を機に北方領土問題の解決を目指す姿勢を鮮明にした。今回の会談でも、この8項目の協力プランへの取り組み状況や担当閣僚の新設を伝え、領土問題を前進させるための「新アプローチ」についても意見交換する模様。ロシア経済担当大臣に就任した世耕氏も首脳会談に同席する予定。また、外務当局幹部が同席せず、両首脳だけで通訳を交えて話し合うことも検討していることが明らかになっている。


 まさに安倍首相は本気でロシアと向き合っている。ロシアとの長年の懸念である北方領土問題の解決に向け、安倍首相は電話会談などで積極的にプーチン大統領とコンタクトを重ねてきた。そして12月にはプーチン大統領を安倍首相の地元・山口県に招いて、会談することも決定している

。その際に北方領土問題を含む日露交渉の「成果文書」を発表することも視野に調整しているようだ。


 ちなみにロシアの大統領が日本を訪問するのは、平成2211月に横浜で開催されたAPEC首脳会議の際に、当時のメドベージェフ大統領が日本を訪問して以来のこととなる。



楽観論は禁物



 しかし相手はロシアである。一筋縄ではいかない相手である。これまで日本は何度も痛い目に遭ってきた。そして国際的にもロシアの帝国主義ぶりは一種の恐怖感を与えている。クリミア侵攻は今も記憶に新しい出来事であるし、シリア内戦への積極介入でアサド政権を擁護する姿勢は、国際社会の賛同を得られていない。


 これまでも日本政府やマスコミは、日露関係の改善に期待感を示してきたが、会談や交渉の直前になってロシア政府筋が不可解な発言をし、「交渉は簡単にはいかない」という現実に打ちのめされた経緯が何度もある。

(参考記事 「帝国主義ロシアの北方領土に対する不誠実な対応」)

http://japan-in-the-world.blog.jp/archives/1056829246.html


 例えば今回の首脳会談の前にもロシアはあらゆるところで、日本の出方を探っている。92日のブルームバーグにプーチン大統領のインタビューが掲載されていた。「日本の友人らとこの問題の解決策を見いだしたいと強く望む」と期待感を示した一方で、「ロシアが現在、中国との間で築いているのと同じぐらい強い信頼関係を日本とも構築できれば、われわれは何らかの妥協点を見いだせる」と発言した。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-09-02/OCUKNS6KLVRL01


 日本が中国と同じくらいの信頼関係で、というのは日本側からすれば不可能である。日本にはアメリカという同盟国が存在する限り、敵対する中国のように対米戦略の一環としての外交戦略は取れない。中国がロシアと緊密に連携する理由は明らかに対米戦略の向上なのである。よってプーチンの発言は、最初からそんなことは不可能だと知りながらの発言なのである。ボールは日本にあるとでも言いたいのだろうか。


 また、ロシアのペスコフ大統領報道官は記者会見で「ウラジオストクで2日に開かれる露日首脳会談でプーチン大統領と安倍首相はクリルについて話し合うが、これは主要テーマにはならない」

と発言。大統領報道官が北方領土はテーマにならないと断言したのは、大ニュースである。これは日本が抱いていた期待感と、楽観論を見事に砕く発言となったのは言うまでも無い。



経済協力とロシアカードは保持しておくべき



 とはいえ日本はロシアとの関係を無駄にしてはならない。アメリカの国際的影響力が低迷するなかで、日本としてもアメリカ頼みの外交に終止符を打たなければならない。ましてやロシアは隣国である。日本は周囲国にロシア、中国、北朝鮮という軍事的脅威を抱える国家と隣同士という現実に頭を抱えている。韓国はアメリカと同盟関係にあるが、日本とは政治的な対立(正直に申し上げれば韓国側が拒絶している)を抱え、真に協力関係を築いているとはいえない。


 日露関係はこのような視点で見れば、改善のチャンスはある。幸いプーチン大統領と安倍首相の関係は良好で、信頼関係がある。このチャンスを十分に生かし、日本外交の選択肢を広げるべきである。


 日露両首脳は北方領土問題を含む平和条約交渉を、今までの発想にとらわれない「新しいアプローチ」で進めていくことで一致しているし、プーチン大統領も前向きな姿勢だ。キーワードはやはり「経済協力」であり、確実に前へ進めて、領土問題につなげたい。


 具体的に考えてみると、主な経済協力のなかでも資源分野での協力が先行して進みそうだ。ロシアの国営石油会社「ロスネフチ」および国営ガス会社「ガスプロム」は、日本企業と、石油およびガスの生産および精製に関する新たなプロジェクトの共同実施について協議している最中である。極東開発で協力することはロシアの政策とも一致するし、強力な「仮り」を作ることになるだろう。


 ロシアのウシャコフ大統領補佐官「独立系天然ガス生産・販売会社『ノバテク』は、日本の『日揮』および『千代田化工建設』の参加を得て、『ヤマルLNG』液化天然ガス工場を建設する。これに続くのがプロジェクト『北極LNG2』。ロスネフチとガスプロムは日本企業と、炭化水素の生産および精製に関する新たなプロジェクトの共同実施について協議している」と述べ、両国の経済協力は確実に実行されていることがわかる。


 しかし油断してはならないのは、中国の存在である。94日に中露首脳会談が予定されており、そこで何らかの新たな締結があると見込まれる。恐らく大規模な経済協力であろう。日本がロシアとの連携を模索していることを、中国も見逃すはずがない。中国は協力な対米戦略のパートナーであるロシアとの関係を非常に大事にしていることがわかる。


 言ってみれば、日米同盟と中露同盟の構図になっているのだが、そこに日本が切り崩しにかかっていくと考えれば、今回の首脳会談は非常に興味深いものになる。中国の焦りも垣間見えるだろう。一方で同盟国の日本がロシアとの接近を試みている現状をアメリカはどう見ているのだろうか。アメリカ国務省のカービー報道官は記者会見で、「日本とロシアが両国の外交関係を検討のうえ、決断したことだ。アメリカ政府が懸念したり心配したりするものではない」

「ロシアのウクライナでの行動やクリミアの併合について、われわれは懸念をしており、今はまだロシアとの関係を通常の状態に戻すべきではないという考えは変わらない」


 様々な解釈が可能な発言だが、アメリカは日本を駒にしてロシアの動きを注視していることは言うまでも無いだろう。日本は軍事的政策を実行できないことで、ある意味で中立的な国家と言えるので、その日本があらゆる手を使い、ロシアや中国へコンタクトを取ることは非常におもしろい。安倍首相はロシア出発前の記者会見で、「胸襟を開いてじっくり話をし、平和条約、領土問題を前進させたい」と決意を述べた。新たな外交カードを手に入れるべく、安倍首相は、プーチン大統領との会談に臨む。



(古川 光輝)
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中国大使館爆破  テロ攻撃はついに中国にも

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2016年91  古川 光輝

 

 

大使館爆破の詳細

 

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キルギスの首都ビシケクにある中国大使館でテロ事件が起こった。爆弾を積んだ車が門に突っ込み、自爆した模様。運転手が死亡し、キルギス人の大使館職員が負傷した。

中国大使館はビシケク南部にあり、米国大使館の近所である。爆発があったのは午前9時半ごろ。灰色のキノコ雲が上がり、爆音は市内のほぼ全域に響いたという。爆発で大使館の壁が崩れた。運転手の遺体の一部は爆発地点から約600メートル離れた場所まで飛んでいったという。

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テロを実行した自爆犯はこの車の運転手であったことが明らかになっている。地元のビシケク警察筋はAFPの取材に対し、三菱自動車の乗用車「デリカ」が同日朝、大使館の門を突き破り、大使公邸に近い中庭の中央部で爆発したと説明した。

AFP通信 http://www.afpbb.com/articles//3099103?pid=18246704&page=1

 

キルギス外務省の発表によると、アブディルダエフ外相は中国の王毅外相と電話で会談し、当局が中国の外交官の安全を確保するために必要な措置を講じると伝える。

 

キルギスのジェニシュ・ラザコフ副首相「爆発によって死亡したのは自爆犯のテロリストだけだった」と記者団に語った。

 

中国外務省の華春瑩副報道局長は今回の事件について「中国側は非常に驚いており、こうした極端な暴力行為を厳しく糾弾する」コメントした。中国側はキルギス側に全容解明を求めている。

 

 

 

テロ攻撃は十分想定しておくべきだった

 
 

私は何度もこのブログや、前ブログ「日本国際問題マガジン」にて指摘してきたが、もはやテロ攻撃は全世界で警戒すべきレベルにまで、その危機は高まっている。

(参考記事 「日本人の国際情勢の無関心 もう何も知らないでは済まされない」)

http://japan-in-the-world.blog.jp/archives/1056517865.html

 

イスラム原理主義者(過激派)は米国を憎み、ニューヨークでの同時多発テロやボストンマラソンを狙った無差別テロで国際社会を震撼させた。その後、アルカイダの特徴である大規模テロに変わり、タリバンの復活やISの台頭で、シリアやイラクを中心に小規模なイデオロギーを剥き出しにした、卑劣な暴力行為が中心となった。

 

一方でISは暴力によるカリフ制国家樹立の目標のためにテロ攻撃を活発化。攻撃はヨーロッパにシフトし、パリ、ブリュッセル、イスタンブールに大規模な無差別テロを実行した。そして、イスラム教徒が多い東南アジアの過激派組織へのネットワークを生かし、協力を求め、バングラデシュの首都ダッカでもテロ攻撃を実行した。そして今回のキルギスで起こった中国大使館爆破である。

 

今回の記事は特定のテロリストを取り上げたものではない。テロ攻撃を企て、実行する全ての過激派組織目線を向けたものである。中国に関して言えば、十分にテロの可能性が予想できたはずである。中国は南シナ海、東シナ海での違法な活動が目立つが、新疆ウイグル自治区住民への弾圧は何年も前から問題視されてきた。つまり中国は「敵が多い国」なのである。

 

ウイグル族はイスラム教スンニ派の民族で、13世紀にかけて中央アジアに展開した遊牧民であると定義付けされる。中国国内に最も多く存在し、カザフスタンやウズベキスタン、そして事件のあったキルギスにも多くのウイグル族が存在する。

 

しかし現在の新疆ウイグル自治区は漢族の入植が進み、中国人民解放軍の人員を含めると、ウイグル族よりも割合が多いことがわかっている。現在、ウイグル族は東トルキスタン共和国樹立のために、中国からの分離独立を画策している。現代史眺めているとソ連やユーゴスラビアの例見るように、独立運動が活発化した時期があった。独自の文化と所属する国家との宗教の違いは最大限に尊重されるべきである。中国は共産党政権という独裁的な政権であることから、分離独立には相当なアレルギー持っており、ウイグル族を武力により弾圧する行動に出ているのは周知の事実であった。

 

2015年にタイのバンコクで起きた連続爆破テロは、亡命を目指していたウイグル族109人が強制送還されたことへの報復だとされている。実際に過去にこうした大規模なテロ攻撃がなされたことをしっかり認識しておけば、中国を標的としたテロの可能性も予想できたと言える。問題は中国の治安当局や諜報機関、ならびにキルギスの治安当局が、事件を防ぎきれなかった点である。治安当局と諜報機関は国家を守ること最優先の任務とする。日本の当局も、もう一度危機感を高めるべきである。

 

 

世界は危険で溢れている

 

 

 キルギスの武装勢力とISの関係についてだが、どうやら緊密な関係を持っていることはないようだ。しかしキルギスにはイスラム過激派の「ヒズブ・タフリール」という過激派が存在する。2006年に活動を禁止されてきたが、タリバンやアルカイダと緊密な関係だったことが明らかにされている。今回の犯行がその組織に属する者なのかは不明だが、可能性としては十分にあり得る。その場合、ウイグル人による中国政府への反発よりも深刻な事態であると言える。

 

特筆すべきはキルギス人約500人がイラクやシリアでISと戦うために出国した経緯があることである。ISからしてみれば、ISを味方しない者は全て「十字軍」とみなして、攻撃の対象とされる。そのため、キルギス政府はISによる攻撃の脅威に直面していると危機感を示していたのだ。まさにその通りになってしまった。防ぐにも防げないのがテロ攻撃である。

 

 従来の戦争は攻撃に至るまでに、様々な兆候が目に見えてわかるはずだった。外交が決裂して、戦争をせざる得ない状況に追い込まれ、戦闘状態に入るケースがこれまでの戦争に多く見られたが、テロは予告なしに、無差別に民間人の命を奪う卑劣な犯行だ。まさに殺人事件の「通り魔的」犯行であり、言い換えれば巷で起こる「殺人事件」も「テロ」と認定されてもおかしくないのである。

 

 何度も言うが、テロは何もイスラム過激派だけの犯行を意味するものではない。反政府組織や個人であっても、武装し、民間人を無差別に殺害する行為は、今の時代で言えば全てがテロと認定することが可能なのである。

参考記事 「仏・ニースのトラック突入テロ 日本人が頭に入れておくべきテロの恐怖」

http://japan-in-the-world.blog.jp/archives/1059319682.html

参考記事 「外国人戦闘員の帰還とホームグロウンテロの危険性」

http://japan-in-the-world.blog.jp/archives/1056563752.html

 

 以上のことを頭に入れておけば、世界はテロの脅威に対してどう向き合っていけば良いか考えるきっかけになるのではないだろうか。テロリストはISだけではないが、例えばISは日本を「十字軍」の一員だと認定している。日本は自衛隊をシリアやイラクに派遣していないし、武力行使を伴うテロとの戦いに参加はしていない。しかし米国の同盟国であり、多額の中東支援を約束していることに対してISは反発しているのだ。

 

 そして「危険な地域に出歩かないことが一番の予防策」といったような夢物語は現代では通用しない。実際、日本人に人気の観光地であったパリやブリュッセル、イスタンブールでもテロは起こっている。そのなかで邦人の旅行者が巻き込まれなかったことは奇跡である。

 

 日本国内でもテロの可能性は十分にありえる。イスラム過激派だけでなく、反日団体、反政府団体による攻撃や、ホームグロウンテロ、ローンウルフ型のテロにも警戒が必要だが、残念ながらその全てを実行前に摘発することは、日本の諜報レベルでは不可能だろう。ただこれらの認識を理解していれば、ある程度の心構えはできるはずである。日本人に足りないものはそこなのだから。「平和ボケ」というものがいかに国をダメにするものか私は改めて実感した。若い世代の皆さんには、今回の中国大使館爆破テロをきっかけにテロが身近にあるものだと認識してほしい。

 
 

(古川 光輝)
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決して甘く見てはいけない北朝鮮の軍事行動

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北朝鮮


 北朝鮮が潜水艦弾道ミサイルを発射したことで国際社会は慌しく動き、国連安保理で北朝鮮への非難決議が採択されたが、今なお日本国内の世論として対北朝鮮への脅威が高まることはなく「楽観論」のような認識が広がっている。

 

 日本を射程に置いていることは明らかであり、精度は間違いなく高まっている。非難決議や経済制裁が効力を発揮しないことが明らかになり、ミサイル発射技術と核開発の技術進歩が飛躍的に高まっている。

(参考記事「北朝鮮の暴走を止める方法」)

http://japan-in-the-world.blog.jp/archives/1060554377.html

制裁を発動しても中国やロシアが秘密裏に支援をしているのだから意味がないことは明白なのだ。

 

 

核ミサイルに現実味が沸かない日本

 

 

 北朝鮮がミサイル実験を行うたびに、日本政府は「遺憾の意」や「断固として抗議する」などの声明を出しているが、そのことについて日本国民はどう感じているのだろうか。それらのニュースはトップとして扱われるがミサイル実験が定期的に行われていることから、

「日常的な光景」となり、間違った意味での免疫ができてしまっている。

 

 例えばテレビニュースではトップニュースとして一旦は扱うものの、特集を組んで日本が今後どのような体制を構築していくべきか、などの提言は一切なされない。有識者を招いて意見を求め、司会者が鋭く切り込み国民に正しく事実を伝えて危機を共有するような番組が見てみたい。米CNNや英BBCなどでは頻繁にテロ対策について議論が行われているが、日本の地上波放送でそのような光景を見ることはあまりない。

 

 それらのニュースを見た国民は当然ながら、危機を共有することができない。「ミサイルを撃ったことはわかるが、どうせ日本には撃ってこないだろう」このような認識だろう。北朝鮮がどんな現状で、ミサイル発射を繰り返す意味や目的、中国やロシアとの関係。日米韓の動き。様々な事象が複雑に絡み合い、北朝鮮の動向を予測しなければならない。一部有識者が言うような「北朝鮮楽観論」は絶対に間違っている。有識者やマスコミは質が悪くても影響力があるのだから、いいかげんにしてほしいものである。

 

 

思っている以上にミサイル開発は進んでいる

 

 

 海外メディアの報道を見ていると、その脅威がよく理解できる。現状を認識するには多くのメディアに目を通す必要があるので、参考にしてもらいたい。

 

ロシア・スプートニク829日配信記事では「最大の相手国との対話と交渉が不在な中、北朝鮮は何らの制限もなく、逆に安全保障強化の必要性を見だしている」

http://jp.sputniknews.com/business/20160829/2700778.html

国際的に孤立することを逆手に取り、何の縛りもないなかで開発を進めてきたことがうかがい知れる内容だ。

 

 ロイター通信824日配信記事は、軍縮問題の米専門誌「Nonproliferation Review」の編集者ジョシュア・ポラック氏のコメントを掲載している。「北朝鮮にとってSLBM技術を獲得したと主張することは軍事的に米国やロシア、中国などと並ぶ特別な地位を得ることを意味する」

http://jp.reuters.com/article/north-korea-missile-idJPKCN10Y2BR

北朝鮮は米国やロシアなどと並ぶ兵器を手に入れたということである。軍事レベルやオペレーションでははるかに劣るが、強力な武器を手に入れたことは間違いないようだ。

 

 AFP827日配信記事では米シンクタンク「米韓研究所」のコメントとして「北朝鮮のSLBM実験のペースと手法から、運用能力があり実戦配備が可能になるのは、最も早くても2018年後半」との見解を示している。

http://www.afpbb.com/articles/-/3098864

具体的に実戦配備の時期まで言及している。このような情報は日本にとって非常に有益である。

 

 CNN825日配信記事では米トロイ大学のダニエル・ピンクストン教授のコメントとして、「今回のミサイルの飛距離から北朝鮮側が「非常に急速な進展」を遂げている。これほど飛躍的な進展はおそらく誰も予想していなかったのではないか」

http://www.cnn.co.jp/world/35087980.html

まさにその通りで、誰もが予測していなかったのだろう。その証拠が国際社会の動きである。意味の無い制裁や声明を連発し、悠長にその動向を見守ってきた代償である。

 

 潜水艦弾道ミサイルは非常に衝撃的だ。ここまで開発が進んでいるとは全く予想していなかった。私自身も反省している。危機を共有できなかったことを考えれば、私もネットメディアと政治フリーペーパーを運営する者として反省しなければならない。ここで読者の皆様にお詫びする。これからも日本のメディアが指摘しないコンテンツを皆様にお届けしたい。

 

 

古川 光輝

https://twitter.com/mitsuteru1127


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インテリジェンス・レポートNo.2

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中国当局による日本人拘束についての報告 その

 
 

インテリジェンス2
 

前回は植林事業が諜報活動のきっかけであったことを指摘した。外務省管轄であることから国際情報局の指示により鈴木氏が情報収集に動いたことが予測できることを示した。では国家機密に関わる情報源はどこが出所なのか考えみたい。

 

諜報活動には現地の協力者が必要である。国家機密に関わる重要人物の存在が必ず必要になる。情報提供者は何らかの見返りを求めて国家機密を漏洩する。金銭的な要求や地位や名誉などのポストを要求することがほとんどである。当然ながら国家機密に関わる情報はそこにアクセスができる権限者であることが必須である。

 

今回の情報収集にあたり、中国側の情報提供者は在日中国大使館の元幹部であると思われる。この職員はすでに中国に帰国しており当局に拘束されたとの情報が入っている。恐らくこの元大使館幹部が情報提供者である。この元幹部が大使館勤務中に外務省国際情報局、あるいは内閣情報調査室から協力を要請され、鈴木氏に機密情報を渡したと考える。この際元幹部の身の安全と家族の安全を確保することを日本政府に確約させたと見る。しかしそれは日本国内においてである。何らかの理由で元職員が中国に帰国したのだが、その時に拘束されたのだろうか。

 

諜報が発覚した場合、外国人諜報員を拘束すると同時に国内の協力者も拘束する、または殺害することは珍しいことではない。ロシアではよく暗殺事件が起こるが、その一環だと考えれば驚くことではない。要はそれらの事実が公に出るか出ないかなのである。今回の鈴木氏の拘束の場合、鈴木氏が拘束されたあとに大使館元幹部が拘束されたのか、あるいは拘束が先なのかは不明だが、この大使館元幹部が情報提供者であったことはほぼ間違いないだろう。

 

鈴木氏は長年に渡り、日中交流事業に関わり、その名の通り日中関係に貢献してきたが、今年4月に政府内部での仕事を引き受けた際に外務省国際情報局から中国の国家機密の情報収集を指示され承諾。その情報提供者として用意されたのが中国大使館の元幹部であった。外務省管轄の植林事業を窓口に中国の情報を探るも、日本政府内部と鈴木氏の親密な関係に気付いた中国当局が鈴木氏と大使館元幹部を拘束。どこで情報が漏れたかは定かではないが、日本政府内部に中国の協力者がいることも否定できない。

 

 今回、鈴木氏の情報がなぜ中国当局に漏れたかは不明である。もし拘束の理由が、例えば鈴木氏が中国の現体制を批判する趣旨の発言が原因だとすればそれも十分に拘束の対象になりえる。しかしそれは外交問題に発展する問題である。しかし強気の外交を進めてきた安倍首相と菅官房長官がこの件について大きなアクションを起こさないということは、諜報の事実があったことを暗に認めているといわざる得ない。仮に菅官房長官の会見での発言の通り「いかなる国に対しても諜報活動は行っていない」のならば、鈴木氏の身柄拘束を解くように全力で取り組むべきであるし、国民にもそれをアピールするはずである。そのアクションが無い時点で諜報行為があったことは明らかである。

 

 重要なことは日本でも「スパイ防止法」の制定を急ぐことである。日本は軍事的政策が制約されるなか、国際社会への影響力、外交において遅れを取らないためにも情報収集と諜報活動はやらざるを得ない。「日本人がスパイなどしない」という神話は存在しない。諜報活動をしない選択肢もない。むしろ日本国内に潜む外国人諜報員の存在が深刻である。武力行使という武器を実質的に持たないわが国が、外交戦略を組み立てる上で最重要に考えるべきは「情報収集」である。各国が集めるあらゆる情報よりも、より正確で最新でなければならない。

 

 私たちが知らないところで外国人諜報員が暗躍していることは当然のように認識しなければならない。それは国際常識であり、ドラマや映画の話ではない。政府内部、企業内部、自治体内部、マスコミ、一般社会に紛れ込んでいることは明らかである。その結果日本の外交が不利になり、国益を損なうのである。その反面、日本には各国大使館の武官、外務省国際情報局、内閣情報調査室、公安調査庁といった4つの組織が情報収集、諜報活動を展開していて、日本がスパイ行為を行っていないなどという「嘘」は通用しない。

 

 東アジアは中国の軍拡、北朝鮮の暴走、それに伴う韓国の政変、東南アジアから波及が予測されるテロ攻撃などにより諜報活動がより活発化するだろう。その流れに日本も遅れをとってはなるまい。今回の日本人拘束もその一環である。中国の軍拡に伴い、共産党指導部の内部情報を収集するために鈴木氏を利用したが失敗に終わった。これは外務省国際情報局の失態といえる。

 

終わり

 

古川 光輝

https://twitter.com/mitsuteru1127

 


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中国に勝利したアフリカ外交の全容

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アフリカ首脳らとの記念撮影


 安倍首相、岸田外相ならびに日本政府の外交団が遠いアフリカの地、ケニア・ナイロビに訪問し、
TICAD(アフリカ開発会議)に出席した。アフリカ大陸の地で行われるのは初めてのことで、歴史的な国際会議となった。

 

 主な議題はアフリカ経済の発展である。開発が遅れるアフリカ諸国に、日本が支援を約束する場ということでアフリカからすれば非常に重要な会議である。インフラ設備や感染症対策、雇用創出に食糧の確保、そしてテロ対策。アフリカ諸国が抱える問題は山積していて、その波及は今や世界に広がる。

 

これらの課題に対して日本がリーダーシップを掲げて「質の高い」支援を担っていく。まさに安倍首相が掲げる「地球儀外交」の考え方である。今回はTICADでどのようなことが行われたのか見ていきたい。遠いアフリカのことだが他人事ではない。日本政府がどのような外交をしているか、国民はしっかり理解するべきである。グローバル社会の中で知っておかなければならないはずだ。

▼開会セッションでの演説の様子
開会セッションでの演説の様子


▼日本政府主催のレセプション
日本政府主催のレセプション


 
 

意欲的な安倍首相

 

 

 TICADを利用して、安倍首相は多くの国の首脳と会談を行った。

・ケニア(共同記者会見)

日本は、質の高い技術や人材育成で、大きな貢献をすることができると表明

・ギニア

高効率発電の導入や日本企業のギニア進出への期待を表明

・コートジボワール

二国間投資協定の交渉開始を宣言し、早期妥結へ向けて協力

・モザンビーク

日本の対モザンビーク投資が拡大していることへの歓迎の意

・ガーナ

投資協定の早期妥結,円借款「東部回廊整備計画」の早期実現

・南アフリカ

アフリカの開発や安保理改革を含む国際場裡における協力等に関し,意見交換

・マダガスタル

トアマシナ港拡張計画に係る約452億円の円借款を供与する方針を表明

・セネガル

マメル海水淡水化計画に約274億円の円借款を供与する方針を表明

・ナイジェリア

テロ対策及びナイジェリア北東部への人道支援を継続する意図を表明

・ウガンダ

カンパラの送変電網整備のために約136億円を限度額とする円借款を供与する方針を表明

・ジブチ

ジブチへの14億円の食糧援助の実施を決定

 

 やはりインフラ設備を中心とした支援になるようだ。発電所や港湾整備、食糧援助はアフリカの国民にとって大きな恵みとなる。ぜひ質の高い支援を継続していってほしい。

 

 安倍首相はTICAD開会に合わせた基調講演も行った。以下にポイントをまとめた。

「質の高い,強靭,安定した、という,3つの修飾語をアフリカにつけてみます。それこそ日本が,皆さまとともに目指すアフリカの姿です。「質の高いアフリカ」を,インフラ,人材,「カイゼン」の三要素がつくります」

 

「日本はG7サミットで,保健分野へ向けた貢献策を示しました。その5億ドル以上が,アフリカの保健システム強化,感染症対策のため,グローバル・ファンドや,世銀の「パンデミック緊急ファシリティ」を通じて向かいます。これによって,30万人以上の命を救えるはずです」

 

「アジアで根づいた民主主義,法の支配,市場経済のもとでの成長――,それらの生んだ自信と責任意識が,やさしい風とともにアフリカ全土を包むこと。それがわたしの願いです。アジアからアフリカに及ぶ一帯を,成長と繁栄の大動脈にしようではありませんか。アフリカと日本と,構想を共有し,共に進めていきましょう」

 

演説全文

http://www.mofa.go.jp/mofaj/afr/af2/page4_002268.html

 

 

バラマキの中国か質の日本か

 

 アフリカ支援といえば近年中国が積極的に動いている。カネにものを言わせていると言ってしまえば言葉が悪いが、日本が今回3兆円規模の支援を約束したのに対して、中国は倍の6兆円である。しかし日本はカネをばらまくのではなく、質で勝負すべきだ。日本の技術は世界の誰もが認めるものであり、信頼の価値がある。果たしてアフリカの人たちはどちらに傾くのだろうか。真に生活を豊かにするのはどちらか。アフリカ諸国の指導者らは賢明な選択をするべきだ。日本のメディアもその点に触れている。

 

産経ニュース827日配信記事では、「現状では日本は中国に大きく後れを取っている」と前置き、「「量」で攻勢をかける中国に対し、日本は「質」「信頼性」で対抗する。TICADの特色の一つは、日本の支援策の進捗状況を毎回確認すること。27日に首相が表明した投資や人材育成などの期間を「3年」と限定し、目標数値を掲げた。日本の支援が「有言実行」で、信頼性が高いことをアピールし、中国との違いを際立たせる狙いだ」と報じた。確かに支援の目標を定めることは非常に良い案である。歓迎したい。さらに産経は安倍外交を手放しで褒めるのではなく、「首相のアフリカ戦略はこれまでの外交実績を、さらに発展させようとするものだ。「最後のフロンティア」で、安倍外交の真価が問われることになる」として、一定の成果を求められることも指摘した。

http://www.sankei.com/politics/news/160827/plt1608270030-n2.html

 

朝日新聞デジタル828日配信記事は、「首相は今回のTICADで、今後3年間で官民で総額3兆円規模を投じる方針を表明している。日本が競争力を持つ分野で官民が協力してアフリカ開発に携わり、アフリカで影響力を強める中国に対抗する考えだ」と報じた。

http://digital.asahi.com/articles/ASJ8X4V8NJ8XUTFK001.html?rm=473

 

「アジアの盟主」はどの国か。自然と日本と中国が争うわけだが、不毛な争いは時間の無駄である。価値観も国民性も違う。そのなかで世界の評価を決めるのは外交方針である。他国のためにどこまでできるか。道徳精神が強い日本はそこで勝負するべきだと思う。アフリカ支援にしてもカネが問題ではない。絶対的に「質」で勝負すべきだ。その意味で言えば、今回の外交は間接的に中国に勝利したと言えるだろう。

 

閉幕後の安倍首相の記者会見で安倍首相はこう述べた。

「日本が目指すアフリカは、産業化した強靱な、安定したアフリカだ。アフリカがさらに発展し大きく変貌すると確信している」

 

TICADの成果をまとめた「ナイロビ宣言」はこちら。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/af/af1/page3_001784.html

 

 

古川 光輝

https://twitter.com/mitsuteru1127

 


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