シリア情勢の解決へ向けて、オーストリア・ウィーンにて、17カ国の外相級会談が行なわれた。

国際会議でシリア情勢が片付くかは疑問だ スプートニク

国際会議でシリア情勢が片付くかは疑問だ スプートニク


1、公平な選挙実施を急ぐこと
2、シリアが領土の一体性を保つこと
3、省庁や警察などの政府機関の維持
4、国連に対して、宗派的ではない暫定政権樹立の協議の開始のために、政府と反政府派の代表を集めることを要請

などを盛り込んだ声明をまとめ、閉会した。

参加した17カ国は

・アメリカ
・ロシア
・フランス
・ドイツ
・イギリス
・イタリア
・トルコ
・レバノン
・イラン
・ヨルダン
・サウジアラビア
・イラク
・エジプト
・カタール
・アラブ首長国連邦
・オマーン
・中国


日本という貴重なプレーヤーが無視されている

新たなウィーン体制の幕開けか しかしここに日本はいない TBS

新たなウィーン体制の幕開けか しかしここに日本はいない TBS



残念ながら、日本は参加できていない。アジアから唯一、中国が参加していることが少しばかりショックである。

私は、本誌10月21日付け「シリア介入 日本の出番は紛争解決後」にて、シリア情勢における日本の役割を具体的に提案している。

平和構築のための知識は民主主義国家のお手本とされる日本の手法を学ぶべきである。

憲法草案や選挙の実施、あらゆる民主主義のシステムを日本に任せるべきだと提案したが、よりによって民主主義から遠く離れた一党独裁の中国がこの会議に参加しているではないか。

どのような役割ができるかは疑問である。恐らくロシアの打診があってのものだが、それにしても国際社会は日本が重要な役割を任せられた時に、どれだけ役に立つ国家なのか理解していないようだ。

以下に、このウィーン会議に出席した各国代表・および関係者の発言をできるだけ集めてみた。


アメリカ・ケリー国務長官
「アサド大統領退陣を求める、米国の立場は変わらない」

ケリー米国務長官
 
ケリー米国務長官は南シナ海も含めて悩みが多いだろう ブルームバーグ


ロシア・ラブロフ外相
「アサド氏は辞任すべきだとも、アサド氏は留任すべきだとも言っていない。アサド氏の去就はシリア国民が決める、と言っている。シリアの未来はことごとく、シリア国民が決めるのだ」

イラン・ザリーフ外務大臣
 「シリアの将来はシリアの人々によって決定されるべきであり、ウィーンの会合はシリアに責任を設定するためのものではなかった」
「見解の対立もあったが、この会合で、あるグループが最初からアサド大統領の退陣を求めた。イランは最初からこの決定はシリアの人々自身で行われるべきだと表明した」

フランス・ジュベイル外相
「(アサド氏は)政治プロセスで退陣するか、あるいは強制排除させるか、どちらかだ」

中国・陸慷外務省報道官
「中国は一貫してシリア問題の政治的解決に取り組み、国際社会の斡旋を支持している。現在、シリア問題において政治的解決を図る勢いを見せ、関係各国がこれをきっかけに共通認識を拡大するよう期待する」

イギリス・ハモンド外相
「アサド政権への対応を巡る隔たりを埋める余地があるかどうかを見極めるために私たちは集まった。シリアの困難を終わらせるための前進があることを期待している」

EU・モゲリーニ外交安全保障上級代表
「難しいが建設的だった」

見ての通りバラバラだ。うわべだけの共同声明なのはまず間違いない。

やはりカギを握るのは米露の動向だ テレビ朝日
 
やはりカギを握るのは米露の動向だ テレビ朝日


見逃してはならないのは、この声明と同じくしてロシアの航空機がエジプトで墜落。現時点でテロの可能性が非常に高い。
さらに、米軍がシリアに特殊部隊を駐留させるとした。

対話と軍事力を正反対の手法で繰り出す、大国がよく行なうパターンは今でも健在のようだ。


勘違いしてはならないロシアの行動


公平な視点でおさらいしておきたいが、一連の和平会議はロシアが主導したものだ。

どのメディアもこの重要な視点が抜け落ちているが、10月24日の時点でロシアが和平に向けた提案を行なっている。
アラブ圏の新聞、アッシャルク・アルアウサト紙によると、

1、反体制派との停戦
2、シリア政府と反体制派による「和解会議」を開催
3、議会選・大統領選の実施を1年6ヶ月以内に開催
4、軍や政府機関が混乱している場合にはアサド大統領の出馬も認める

などとした提案をロシアはしている。

欧米メディア(当然日本も含む)はこの実態を大きく取り上げていない。

「ロシアは全てが悪である」「ロシアが混乱の全ての原因である」

という論調の元、記事が書かれている。

日本未来マガジンはこうした先入観だけで満たされた記事を書くつもりはない。
それは若い世代に間違った解釈を与えてしまう恐れがあるからだ。

公平・公正に見て、シリア情勢を打開するために積極的に行動しているのはどの国だろうか。

確かに軍事作戦の手法には賛否両論があるのは否めない。
しかし、上記のような和平案を出すなど、関係各国の調整に尽くしているのはロシア側ではないだろうか?

アサド氏の処遇が最大の焦点だ スプートニク
 
アサド氏の処遇が最大の焦点だ スプートニク

 
全て、ロシアが正しいわけではない。

中東への関与を強めて、ロシアの影響力をシリアで保持しておきたいプーチン大統領の行動は、あまりにも露骨だ。

さらにイランをも巻き込み、シリアを舞台にアメリカに負けない外交努力をしようとする行動であることは間違いない。
その先にはEUや日本などによる経済制裁の解除に持っていきたいのだろう。

筆者はそこまで先を読みながら、上記に示した、ロシアの平和的解決に向けた行動を評価しているのだ。

今のところ、シリア情勢の主導権を握っているのは、間違いなくロシア側である。

俯瞰して見れば、よくわかることだ。

この論調は日本のどのメディアでも、ほとんど論じていないので皆さんの参考にしていただきたい。

写真はアサド政府軍 解決する日はくるのだろうか AFP
 
写真はアサド政府軍 解決する日はくるのだろうか AFP
 

記事執筆・日本未来マガジン編集長
藤堂 秀光

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