韓国国防省は3日、北朝鮮軍が同日午前10時(日本時間同)ごろ、日本海側の江原道・元山一帯から日本海に向かって「短距離の発射体」6発を撃ったことを明らかにした。

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 飛距離は100〜150キロと推定されている。韓国軍は「短距離の発射体」について、ミサイルなのか、多連装ロケット砲なのかを含め、詳しく分析している。

菅義偉官房長官は3日午前の会見で、情報は把握していると認めたうえで、
「日本に直接飛来する飛翔物は確認していない。我が国の安保障上、直接影響する事態は発生していない」
「今後も米韓と連携しながら北朝鮮に対して挑発行動の自制、安保理決議の遵守、北朝鮮を含む六カ国協議の再開を求めていく」と話した。

北朝鮮への制裁決議と、軍事演習への反発と見られる。今のところ日本に被害は出ていない。しかしすでに世界の火薬庫は中東から東アジアにシフトしたのではないか。
北朝鮮の反発は別のところにもあり、その一つにTHAAD(米軍によるミサイル防衛システム)の韓国配備も含まれる。その配備に中国もなぜか反発している。
アメリカは北朝鮮のミサイル対策としてTHAADを韓国に配備することを計画している。
これに中国は「THAADは自分たちに向けられたもの」といい、反発している。


ある意味自覚のある発言


CSIS(米戦略国際問題研究所)所長のジョン・ハムレ氏も指摘していたが、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威は相当なもので、現行のアラスカにある迎撃システムでは不十分だと言う。
ならばかつてロシアに向けて配備された欧州のミサイル防衛システムのような、「対北向け」のミサイル防衛システムを東アジアにも構築するべきだと思う。
北朝鮮はすでに「テロ国家」であり、ロシアなどの大国と比べる余地もなく、無条件で国際的な監視が必要であろう。

そこでカギを握るのは中国。しかし中国の対応は本当に困ったものである。
何せ世界経済でも中国の動向が世界各国の株価に影響され、皮肉にも悪い面ばかり影響力を誇示しているようだ。しかし中国指導部に大国としての自覚はなく、地球温暖化対策を話し合うCOPの場では”途上国”としての位置づけで議論をしているし、このような国が国際的な影響力を得ることは、非常に危険だと思う。
争いごとの中心であるプレーヤーは、他の国に批判されないように真っ当な行動と意見を強調したがるが、中国に関しては平気で南シナ海を埋め立てて軍事基地を建設して戦闘機を配備したり、平気で大気汚染を垂れ流す。
しかし、このなかでのTHAADに対する発言は興味深かった。

THAAD
 
これまでなら恐らく「地域の情勢を刺激する行為で非難に値する」などの声明を出していただろうが、今回は「(防衛システムが)中国向けだ」と言っている。
これは中国の仮想敵国がアメリカ、日本であることの証明であるし、今後の10年20年の計画の邪魔になると考えたからであろう。口がすべったのではないか。
アメリカは表向きは北朝鮮対策のシステム配備として国際社会の賛同を得たい考えで、その反面、韓国に配備しておけば地政学的に中国にも使えると考える。当然のことだ。

ましてや南シナ海の現状を国際社会は、固唾を呑んで見守っている。アメリカは南シナ海における中国の軍事拠点化を阻止できなかったことから、今回の措置に至ったのではないだろうか。
だとすれば日本を含む、東南アジア各国の安全保障も向上し、地域の安定に寄与する。

日本は北朝鮮、中国という脅威を抱えて日々を過ごしている。それらにもっと近い韓国はのんびりしている印象だが、かなりの脅威を感じているはずだ。
日本と韓国は政治的に冷え込んでいるが、安全保障も分野では協力せざるえない。アメリカという共通の同盟国がある限り、その役割は日本も韓国と協力してやらざるえない。

しかしながら、日韓が真に協力する体制が本当に築けるか疑問ではある。慰安婦を巡る日韓合意も、韓国側は合意内容を守らないし、民間団体を制止できていない。
民意にいちいち振り回される韓国の政治体制では対北朝鮮でも、対中国でも、日韓が連携して同じ価値観で対峙することは不可能だろう。それだけ「アメリカ頼りの東アジア情勢」なのだ。
ここを改めない限り、東アジアの真の安定は望めない。オバマ大統領はアジア重視の考えの基に関与を続けてきたが、大統領が変わったらこれもどうなるかわからない。
東アジアは東アジアの当事国で見守る。そんな態勢が一番望ましいのだが、そんな時代は果たしてやってくるのだろうか。


記事・大堂 光輝

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