シリア内戦や中東・アフリカの混乱をきっかけに世界中で難民の発生・流出が相次いでいます。
ヨーロッパ大陸を目指す難民は昨年だけで100万人。(UNHCR:国連高等難民弁務官事務所)今年に入ってからも増える一方で、すでに13万人(同、3月初旬)を超えているのが現状です。

ドイツ難民


難民
 

国際社会の重要な論点として、解決に向けて様々な策が取られていますが、難民問題は一向に解決しません。
ただ、各国の思惑は一致せず、そもそも難民自体を出している国家への批判よりも、受け入れを拒否している国々への批判が相次いでいることは何か違和感を感じます。


難民受け入れが国益に反する事態に
国民の生活を考えれば受け入れ拒否はやむ得ない

難民 トルコ


先日、EUとトルコが不法移民の強制送還について合意しました。
これは、トルコ経由でEU域内に不法入国した難民を、トルコに送還するというものです。
EUは当初、ドイツを中心に難民受け入れを積極的に受け入れてきました。しかし、難民による犯罪、テロの可能性から国内世論の批判を浴び、最近では難民受け入れに対して慎重な姿勢を見せています。

これまで受け入れを容認してきたEUが方針を転換したことで、難民問題は新たなステージに入りました。
なぜ難民受け入れを慎重に考え始めたのか。それは
・難民受け入れに反対しているEU各国右派の影響
・難民に紛れて、テロリストが不法入国する恐れ

この2点が大きなポイントになります。
難民を受け入れることでメリットとなる点は、労働力の確保が大きく取り上げられますが、これをはるかに超えてしまう”リスク”が難民受け入れには生じるのです。
テロリストが紛れ込むことなど、一昔前までは考えられませんでした。これまで受け入れに反対する理由としては、移民や難民に自国民と同等の保障、またはそれ以上の援助が行なわれることはおかしい!という主張でした。
しかし、時代は流れ「テロの脅威」が認識されてからは、「テロリスト侵入」の危険性が難民問題にも影を落とすようになりました。


ここで疑問点が浮かび上がります。国際世論が、難民を受け入れない国への批判に回っているのです。
本来なら、難民を発生させている国への批判が先なはずです。シリアは大国の代理戦争の様相を呈していますが、そもそも批判されるべきはアサド大統領を中心としたシリア政府です。
難民の発生と流出を食い止めるためには、当事国の安定が急務なのです。つまり内戦が起こっているシリアでの和平交渉を急がせること。


ロシアがシリアから撤退し、テロリスト以外の武装組織の停戦が履行されています。
チャンスは今しかありません。しかし、21日のロイター通信の記事によれば、依然として反体制派とアサド政権側の意見の隔たりは大きいとのことです。
難民対策で苦しんでいる欧州各国はシリア和平に介入すべきです。新政権に移行後の支援を約束するなどの手段はたくさんあるはずです


日本においても、他人事ではありません。
日本のすぐ近くには難民発生が予想される、”ある国”がありますよね。そう「北朝鮮」です。
北朝鮮は最近になり、ミサイル発射を繰り返し、挑発をエスカレートさせています。
もし、韓国・アメリカとの間で戦争が再開されたら、日本に難民が大量に押し寄せる事態になるでしょう。


そこで日本はどのような対応を取るべきか。
恐らく政府内部や外務省で想定はされているでしょうが、日本の世論はどう動くでしょうか。
そこでヒントになるのが現在の難民問題なのです。シリアやイラクから遠くヨーロッパに逃げてくる難民にどう対応すべきなのか。
遠い中東で起こっていることですが、将来の日本にも降りかかる問題であることを認識しておくべきだと思います。


mitsuteru.O


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