ブリュッセルのテロは本当に痛ましい大惨事になってしまった。
「EUの首都」と呼ばれるこのブリュッセルで、大規模なテロが起こったことに衝撃を受けた方も多いのでは?
9.11のNY同時多発テロから15年。依然としてテロ攻撃を防ぐ手段が見当たらないことを、国際社会が痛感する最悪の事件になってしまった。


ブリュッセル連続テロの衝撃

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パリに続きEUの首都、ブリュッセルでも大規模なテロが起きたことに、各国の首脳も怒りを隠せない様子である。


フランソワ・オランド仏大統領は「欧州全体が攻撃されている」として、「深刻な脅威に直面するなかで必要不可欠な対策」を講じるよう欧州各国に呼び掛けた。

アンゲラ・メルケル独首相は「恐怖は無限だが、テロに打ち勝つ意志の強さも無限だ」と述べた。

デービッド・キャメロン英首相は「テロリストには絶対に勝たせない」と言明。

バラク・オバマ米大統領は、攻撃は「言語道断だ」と糾弾した。

国連のバン事務総長は「卑劣な行為」だと非難した。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も、「野蛮な犯罪」だと非難した。

ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は「多くの苦しみを生む見境のない暴力」だと述べた。

エジプト・カイロに本拠を置くイスラム教スンニ派の最高権威機関アズハルは、今回の爆発事件は「イスラムの寛容な教義に反する」と表明した。




テロ対策とテロの原因は一言で片付けられない
単純だと思うのは日本人特有の議論


テロが起こるたびにテロの原因や、テロリストが増え続ける理由について論争が行なわれるが、実際に役立つ理論にあまり出会うことはない。
現場ではセキュリティも含めて、最大限の予算を投入してテロ対策に望んでいる。だがISなどはそれを飛び越えてテロ攻撃を仕掛けてくる。


テロ攻撃が起こってから治安の問題や、移民対策などを指摘する専門家が多く存在するが、なぜもっと早くそれに気付いていながら問題提起しなかったのか。
日本人は戦争・テロに不慣れで、いつでも平和主義(お花畑理論)を掲げて、「報復は報復しか生まれない」「対話による解決を」と力説するが、欧州や中東の現場レベルでそんなことを言ったら、バカにされるのがオチである。


治安当局の資金不足、国内の言語の違い、移民政策、貧困、差別、武器所有など、テロリストを生み出す原因が語られているが、それらすべてを一挙に解決するのは不可能である。
テロ攻撃という新しい戦争の形がすでにできあがっていることを、日本人はわかっているのだろうか?
無差別に民間人を殺害するテロ攻撃は、人道上もっとも最悪な行為だが、過激派組織の人間からすればそれが聖戦=戦争なのだ。
どんな手段でも、憎き欧米文化を破壊し、間違ったイスラム理論に基づく国家をISは作ろうとしている。


新たな戦争だという理解ができなければテロ問題を俯瞰して見れない。いつまで経っても時代遅れの国防論に終始してしまう。
テロリストが、さきほど上記で示したテロの原因に賛同し、格差や不満を解消できればテロ攻撃を辞めるかといえば、そんなわけがない。
新たなテロリストを生ませない施策にはなるだろうが、すでに全世界からISに集まっている状況である。新たなテロ攻撃をさせないために何をすべきかを考える必要がある。


それは武力の行使以外に考えられない。残念ながら方法はこれしかないと考える。
恐らく箔のついた専門家や影響力がある方は、「武力行使」などとても言えないのが本音だろう。しかし、心の中では大国の本格的なIS掃討作戦を願っているはずである。
今の国際情勢は、もはや格差問題や移民政策、民族差別といった問題を通り越している。ISは本気で全世界と戦争をしているつもりだ。


ハッキリと断言しておきたい。「日本ではテロが起こらないだろう」と安心している日本国民はまだまだたくさんいる。
なぜ起こらないか、と聞けば答えられないだろう。関心がないからだ。日本人の多くの若者はそのようなレベルである。


今や世界中のどこであろうとテロが起こる可能性がある。ブリュッセルで起こった今回のテロ攻撃も、ある首脳が「驚くことではない」と発言したように、もはやテロ攻撃は現代の新たな戦闘の形になりつつある。
日本を攻撃する理由はたくさんあるだろう。


・アメリカと同盟国であること。
・自由主義の象徴、平和主義の象徴であること
・平和な民主主義国家をテロ攻撃するというセンセーショナルな宣伝効果
・ソフトターゲットに最適なインフラ網
・国民の国防意識、国際社会への無関心さ


我々日本人の普通の感覚でいえば、理不尽な理由ばかりだが、彼らからすればそれが”聖戦”にあたるのだ。
よって日本人がよく言う「平和的解決」は不可能な状態である。対話に応じないからテロリストであり、武力や恐怖で目的を達成するのがテロリストである。
そんなことは何年も前からわかっていたことであり、今さら思い出したように議論することではないのだ。


IS掃討にはかなりの時間を要するだろう。まずはシリア和平を確実なものにして、次期政権への移行を進め、全世界でIS掃討に動かなければこの戦いに勝利はできない。
ISは「カリフ国家」の建設を目指しているが、それに賛同する国家は無い。賛同し、兵士として参加するのは社会に不満を持った人々であり、そのほとんどは「カリフ国家」に興味はないはずだ。
つまり、ISに魅力を感じて自分の生き方を見つけるといった動機でISに参加した者を、失望させることが大切である。
ISに参加して失敗した、後悔したと感じるほどの大規模な作戦が必要であると考える。


どちらにしろ、テロの恐怖は今後も続くであろう。
市街地や航空機の自爆テロや、シリア・イラク戦線での攻撃は今後もやむことは無い。
ただ、ひとつ言えることはISに対話は通じない。
武力行使しか、残された道はないということを理解しておくべきである。
他にISを壊滅させることができる方法があれば良いのだが、もはや手遅れである。



文・Mitsuteru Odo


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