この10日でイエメン情勢は大きく動いています。
国連関係者は和平会議開始の流れで楽観的な考えを述べていましたが、イエメン政府とフーシの対立・戦闘で停戦は実現せず、和平会議自体もなくなるのでは?という観測が出ていました。


4月10日~20日のイエメン情勢の時系列は以下の通り。


4月10日
所属不明の武装組織がイエメン軍兵士28人殺害
南部アビヤン州アハワル市で9日、武装勢力が主要道路を封鎖してハディ暫定大統領派の軍兵士が乗る車両に発砲し、少なくとも28人の兵士を殺害
国際テロ組織アルカイダ系の過激派「アンサール・シャリア」は関与を否定する声明を発表した

4月12日
大規模な戦闘勃発 停戦破棄の危機
12日、ハディ暫定大統領派と、イランの支援を受けるイスラム教シーア派フーシの衝突が複数の箇所で起きた。反政府側は停戦が危機に瀕していると警告している。
当局者らによると、衝突が起きたのは東部のマーリブ県や、フーシ派が掌握する首都サヌアの北東に位置するニームなど。マーリブ県のサルワー地区では、フーシ派および同派と連携するアリ・アブドラ・サレハ前大統領派の勢力が2か所の丘陵の奪取を試みているという。
一方、イエメン当局者によると南部アデンでは同日、国際テロ組織アルカイダの構成員とみられる男が軍の新兵が集まっていた場所で自爆し、イエメン兵5人が死亡した。男は基地に向かっていた新兵の集団の中に紛れ込んでいたという。

4月16日
国連のイエメン特使の発言
国連のイエメン特使は、15日安保理で、イエメンの和平は、これまでのいかなる時よりも近くなっていると述べた。
その関連で、今後数週間が死活的に重要な時期となるであろうと強調した。
特使は、イエメンの停戦はおおむね維持されているとした。

4月16日
UAEがアメリカに軍事支援要請 イエメンのアルカイダに対し
アルカイダに対しての闘争を行っているUAEからの支援要請は、米国としてもこれまで危険なテロを続けてきた「アラビア半島のアルカイダ」に対する軍事行動を検討する機会である。
アルカイダはイエメン内戦を利用して、その影響を広げ、イエメンのかなり広い地域を支配している。
米責任者は、UAEの要請は、作戦における医療救援、救助作戦の他、より広い空爆、訓練等を含んでいるが、シリアやイラクでのように特殊部隊の派遣を含んでいるかどうかは不明であるとしている。

4月18日
アデンで自爆テロを阻止
アデンで17日、空港に対する2重自爆テロが企てられたが、双方とも阻止された。
一件は自爆車が入り口の検問所で止められ、自爆死したもの、もう一件は自爆に至る前に、班員が逮捕されたもの。
これら事件についてはどこからも犯行声明は出ていない。

4月18日
イエメン各地の軍による動き
アラブ連合空軍はアブヤンでアルカイダの拠点を空爆し、5名のテロリストを殺害した。
サウジアラビアとフーシとの関係では、捕虜の交換が行われ、フーシ側はサウジアラビアから30名を受け取った模様。サウジアラビアの捕虜の数は不明。
他方政府軍は、和平交渉が失敗に終わった時には、首都サナア攻略戦を開始する予定で、第141旅団はその準備を終わったとしている。
 
4月18日 
イエメン和平クウェート会議の国連が提示した議題
国連が用意した議題は
・民兵及び武装グループの主要都市からの無条件撤退
・重火器を中心とする武器の引き渡し
・撤退後の地域の引き渡しと治安維持のための委員会の設置
・政府機構の引き渡し
・捕虜、拘留者のリストの交換

4月18日
イエメン和平会議の遅れ
アラビア語メディアはフーシ連合の到着が遅れているので、18日の国連傘下の和平会議の開催が遅れていると報じています。
これに対して、政府側の代表の副首相兼外相は、政府側代表団もいつまでも待つわけにはいかないと言及。
他方、アデンには旧南イエメンの分離、独立を求めるために、多くの民衆が南イエメン各地から集まってきている。

4月20日
サウジ軍がイエメン空爆
イエメンのサバー通信によると、サウジアラビアの戦闘機は19日火曜、イエメンの首都サヌアの複数の地区をミサイル攻撃し、これにより、イエメン人の市民3名が死亡した。

4月21日
イエメン和平会議再開の方向へ
イエメンの和平協議に関する国連報道官は、国連傘下の和平協議は21日開かれると表明した。
この協議は本来18日に開かれることになっていたが、フーシ、サーレハ陣営の代表団がクウェイトに到着せずに、開催が遅れていて、政府側代表団は、21日までに協議が開かれなければ、クウェートを離れると警告していた模様。


▼サウジ軍が実施したイエメン空爆
イエメン空爆


再開の流れであることは間違いなさそうですが、状況は楽観できません。
何より停戦が実現していません。(上層部だけの合意で現場レベルでは停戦など認識できていないのでは?)
フーシの到着で会議が開かれたとしても、イラン、サウジ両者の影が潜んでいます。
結局、イエメンはイラン、サウジの思惑次第で決着、または再び混乱に陥るのではないでしょうか。
IS、アルカイダもイエメンに進出していますが、イエメンの政治自体が落ち着かない限り、テロ組織一層作戦などできやしません。
和平会議が開かれたとすれば、今日、明日の話なので、注視していきたいと思います。


Mitsuteru.O

参考記事引用元
AFP:http://www.afpbb.com/
CNN:http://www.cnn.co.jp/
中東の窓:http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/

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