潜水艦発射弾道ミサイルの発射時の模様


 先日、北朝鮮が発射した潜水艦弾道ミサイルの衝撃は全世界に広がった。失敗を繰り返していた北朝鮮によるミサイル実験はここにきて成功例が増え続け、国際的包囲網の中、確実に一歩ずつ核武装の現実味を帯びてきている。これは国際社会による北朝鮮への圧力が足りなかった結果だ。隣国の日本は非常に危機的な状況を迎えており、東アジアが「火薬庫」であることを改めて思い知らされた。

▼潜水艦ミサイル発射成功で喜ぶ金正恩氏
キムジョンウン
 

 当初国連安保理では北朝鮮への非難声明を採択できなかった。それはご存知のように中国の反対があったためである。最終的に賛成に回り、非難声明を採択できたのだが、中国は一度反対をすること自体が目的だったのではないだろうか。「国連の言いなりにはならない」という少しばかりの反発とつよがりが、今回の反対劇にあったと考える。そうすることで、中国が何を考えているかわからない、一筋縄ではいかない、と思わせることができるからである。


 読売新聞827日付け社説には

「韓国軍によると、今回のミサイルは約500キロ飛行した。射程は2000キロに達する可能性がある。2~3年かかると推定されていた実戦配備がより早まるとの見通しも浮上している。日米韓は抑止力の強化が急務である」

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20160826-OYT1T50117.html


 潜水艦から放たれる弾道ミサイルは非常に脅威である。北朝鮮は旧ユーゴスラビアの潜水艦を使用しており、元来その追跡は容易だと考えられていたが、改良を重ね、進化していることは事実である。日米韓での抑止力向上は日本の安全保障上、欠かせないことであるのは明らかだ。しかし韓国が国際社会と連携する姿勢がないことのほうが、北朝鮮よりも問題であると思うのだが。


 産経新聞825日付け社説では

「自国の利益のためには、北朝鮮の強硬姿勢も容認する。中国のこうした態度が、北朝鮮の挑発行為を助長しているのではないか」

http://www.sankei.com/column/news/160825/clm1608250002-n2.html


 まさに正論であろう。国際社会の中で孤立する北朝鮮を守ってまで自国の利益を得ようとする手法はなかなか理解しがたい。そもそも本当に「利益」になっているかどうかは疑問だが、北朝鮮の核実験が全世界を敵に回しているのなら、中国のそれもまた、国際社会から孤立する原因なのである。


 この産経の記事をさらに深化して解説しているのが、米ウォールストリートジャーナル825日付け社説だ。

「米国は北朝鮮の武器取引や金正恩政権の持続を手助けしている中国企業のただの1社に対しても制裁を発動していない。米国、韓国、日本は地域のミサイル防衛システムを拡大・統合させつつある。だが、防衛は最後の手段であり、高度な技術への金氏のアクセスを元から断つという「拡散対抗戦略」の代わりにはなり得ない」

http://jp.wsj.com/articles/SB11227962842099473856204582272351091183944


 国際社会は一致して北朝鮮を監視してきたはずだ。しかしここまで「順調」に核開発を進められてしまっている現状はどう理解すればいいのだろうか。経済制裁を繰り返しても中国が秘密裏に経済支援をしているのだから何も意味が無い。開発能力が向上しているのは明らかなのに、ソフト面での制裁効果はまったく出ていない。今こそ、WSJが指摘するように、「高度な技術への金氏のアクセスを元から断つという【拡散対抗戦略】」が必要になるだろう。


 通常、ここまで制裁を受ければ一気に戦争へと突き進む場合が多い。制裁にはそれなりのリスクもあるはずである。しかし中国やロシアの支援があるのは明らかであるがために、制裁がムダに連発してきたのではないだろうか。今回の非難声明も毎度のことである。この非難声明が北朝鮮の暴走を止めることにはならないので、開発プログラムのハッキング攻撃や、軍事オペレーションに異常をきたすようなソフト面の作戦が必要になると見ている。




 



編集長・古川 光輝

https://twitter.com/mitsuteru1127


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