安倍首相はフィリピンのドゥテルテ大統領と初会談を行い、自衛隊の練習機5機と大型巡視船2隻の供与を決めた。いずれも中国による南シナ海への挑発に備えるもので、両国とも仲裁裁判所が出した判決を尊重するよう中国に求めることでも一致した。

安倍 ドゥテルテ
 

 さてフィリピンのドゥテルテ大統領だが、どうも不安定な一面が目立つ。オバマ大統領がフィリピンの人道問題について言及しようとすれば、会談を拒否したり、その他にも過激な言動を繰り返すことが当たり前のように思える指導者だ。

 そんなフィリピンだが、対中国という観点で見れば絶対に必要不可欠な存在である。南シナ海における一連の挑発行為に歯止めをかけるべく、日本がフィリピンに協力を求めるのは当然のこと。今回自衛隊の練習機の供与などを確約したが、正直これでは物足りない。フィリピンは南シナ海問題の当事者であり、まさに国防上の危機である。そして中国はこの南シナ海を足掛かりに東シナ海への挑発も繰り返すことが見込まれるため、そのまま日本への脅威となる。

 そうした場合、「抑止」という意味で日本が取るべき施策は「中国包囲網」の構築と、「抑止力強化」である。

 「中国包囲網」は国際社会と連携し、中国の手足を縛る戦略だ。国際会議などの場で積極的に中国の行動を批判し、議題に取り上げて、周囲各国の賛同を得る。そこにタブーを持ち込んではならない。外交とは武器を使わない戦争である。現在、安倍首相が掲げる「地球儀外交」は日本の国益を求めながら、国際社会に貢献するというとても難しいテーマだが、国際社会の代表的な懸念事項である南シナ海問題を解決しようとするならば、先に述べたように周囲国との連携は必要不可欠になる。その意味でもフィリピンやベトナム、インドネシアなどの紛争当事国に対して、働きかけを行うべきである。

 そして「抑止力強化」は「中国包囲網」のそれとつながってくるが、東南アジア一帯の抑止力を高めることは、中国への抑止につながると期待して良いだろう。米国は中東やロシア、テロとの戦いの中心的プレーヤーであることから、地政学的にアジアばかりに目線を向けることは不可能なのだから、その代わりに同盟国である日本が、リーダーシップを発揮して、南シナ海の仲裁に積極的に乗り出すべきである。

 南シナ海への仲裁とは、紛争当事国への経済支援と軍事抑止である。軍事抑止とは何も兵器や武器を供与するのではなく、南シナ海における軍事演習や軍による交流でも十分効果が見込める。その結果、中国は尖閣などへの挑発をもって対抗してくることが予想されるが、尖閣は日本の領土であり、国際的に見ても日本に不利な状況にはならない。その場合は正々堂々、自衛隊を派遣し、防衛出動という形で、断固として領土領海を守り抜くべきである。

 その一環として今回のようなフィリピンとの連携は歓迎すべきものであり、今後のアジアの秩序と法の支配に十分貢献するものだと確信している。これからASEAN、東アジアサミットが続いていくが、中国を名指しした批判は抑えられる見込みだ。外交交渉や国際会議でまとまらない懸念は、代表するどこかの一国がリーダーシップを発揮しなければ懸念は解消されない。その役目を日本が担うべきである。


古川 光輝

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