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イランが核合意からの離脱と、制裁を続ける米国への対抗策としてIAEAによる核施設抜き打ち検査を完全停止したと発表した。これによりイランの核開発の状況がわからなくなり、3か月後も停止解除がなされなければ、核開発の検証はさらに困難になるという。


イランの最高指導者ハメネイ師は、「われわれは核兵器を求めていない」と言っているが、「イランにおけるウラン濃縮は今後20%にとどまらない。60%に高めることさえ可能だ」とも言っている。
これでいつでも核兵器に転用できるという”脅し”を手に入れて、それをカードに米国に交渉を迫る意向だ。(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210223/k10012881121000.html


EUの存在感のなさにあるもの


フランス、ドイツ、英国の欧州主要3か国は外相会談の共同声明として、「深く遺憾に思う。核合意に基づく誓約に違反している」と非難。トランプ政権時に散々振り回され、EUも大変だと思うが、イランに助け舟を出していることも事実であり、EUが今後イランとどう向き合って行くのかも不透明だ。
https://article.auone.jp/detail/1/4/8/6_8_r_20210224_1614121821779695


最近外交面で存在感を示せていないEUの決断力のなさが気になる。英国のEU離脱などEU内部でのゴタゴタから始まり、武漢熱の世界的感染によって主要都市もロックダウンし、国力も低下している。それが外交面でも大いに響いていると感じる。


思い悩む米国の出方、そして日本


ブリンケン国務長官はジュネーブでの軍縮会議の場で「イランが核合意を厳格に順守すればアメリカも同じことをする用意がある」と述べた。しかし前政権からの政策転換は容易にできるものではないし、恐らく現在進行形で各セクション、各国との調整とすり合わせが行われている最中だと思う。


ロイターでは今回の問題についてどのように米国は向き合っていくのかを解説した記事を載せた。
まず「欧米の高官は、実際に交渉が始まっても道のりは長く、険しいと話している。」として一般国際社会が考えるような早期のイランの核合意復活は不可能であると示唆している。(https://jp.reuters.com/article/iran-us-negotiation-idJPKBN2AM0FV


要点を絞れば以下のような分析である。

・交渉が難航しそうな点として、トランプ前大統領が18年5月に核合意から離脱後に科した多数の対イラン制裁の取り扱い
・1年余り後にイランが報復として合意に違反して取った措置の責任問題
・米国、イランともボールはそちら側にあると主張
・米高官は米国のどの制裁が解除されるか、イランが取った措置が撤回できるかが問題だとの見方を示す
・イランが支援する中東の武装勢力の存在が米イラン関係をこじらせている


どれも共感できる俯瞰的な分析だと思う。なかでもイランの代理勢力、ヒズボラやイラクでシリアで活動するテロ組織はイランが関与していることはもはや公の事実である。こうした存在が交渉の邪魔をしているのは確実で、しかもそれはイラン自らが指示を出しているのだ。


この矛盾を解くことは不可能でありう、米イラン関係が劇的に良化することはなく、ロシアと同様、永遠の敵国なのである。だとすれば、国際社会への影響を最小限に抑えるように米国は動いてほしいものである。


大変頭の使う、複雑な問題である、日本の国会でこのような議論が行われることはない。国会でのイランへの何らかの決議も出ないだろう。本当に日本はこの先国際社会でどう生きていくのだろう、と心配になる。


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