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インテリジェンス・レポートNo.2

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中国当局による日本人拘束についての報告 その

 
 

インテリジェンス2
 

前回は植林事業が諜報活動のきっかけであったことを指摘した。外務省管轄であることから国際情報局の指示により鈴木氏が情報収集に動いたことが予測できることを示した。では国家機密に関わる情報源はどこが出所なのか考えみたい。

 

諜報活動には現地の協力者が必要である。国家機密に関わる重要人物の存在が必ず必要になる。情報提供者は何らかの見返りを求めて国家機密を漏洩する。金銭的な要求や地位や名誉などのポストを要求することがほとんどである。当然ながら国家機密に関わる情報はそこにアクセスができる権限者であることが必須である。

 

今回の情報収集にあたり、中国側の情報提供者は在日中国大使館の元幹部であると思われる。この職員はすでに中国に帰国しており当局に拘束されたとの情報が入っている。恐らくこの元大使館幹部が情報提供者である。この元幹部が大使館勤務中に外務省国際情報局、あるいは内閣情報調査室から協力を要請され、鈴木氏に機密情報を渡したと考える。この際元幹部の身の安全と家族の安全を確保することを日本政府に確約させたと見る。しかしそれは日本国内においてである。何らかの理由で元職員が中国に帰国したのだが、その時に拘束されたのだろうか。

 

諜報が発覚した場合、外国人諜報員を拘束すると同時に国内の協力者も拘束する、または殺害することは珍しいことではない。ロシアではよく暗殺事件が起こるが、その一環だと考えれば驚くことではない。要はそれらの事実が公に出るか出ないかなのである。今回の鈴木氏の拘束の場合、鈴木氏が拘束されたあとに大使館元幹部が拘束されたのか、あるいは拘束が先なのかは不明だが、この大使館元幹部が情報提供者であったことはほぼ間違いないだろう。

 

鈴木氏は長年に渡り、日中交流事業に関わり、その名の通り日中関係に貢献してきたが、今年4月に政府内部での仕事を引き受けた際に外務省国際情報局から中国の国家機密の情報収集を指示され承諾。その情報提供者として用意されたのが中国大使館の元幹部であった。外務省管轄の植林事業を窓口に中国の情報を探るも、日本政府内部と鈴木氏の親密な関係に気付いた中国当局が鈴木氏と大使館元幹部を拘束。どこで情報が漏れたかは定かではないが、日本政府内部に中国の協力者がいることも否定できない。

 

 今回、鈴木氏の情報がなぜ中国当局に漏れたかは不明である。もし拘束の理由が、例えば鈴木氏が中国の現体制を批判する趣旨の発言が原因だとすればそれも十分に拘束の対象になりえる。しかしそれは外交問題に発展する問題である。しかし強気の外交を進めてきた安倍首相と菅官房長官がこの件について大きなアクションを起こさないということは、諜報の事実があったことを暗に認めているといわざる得ない。仮に菅官房長官の会見での発言の通り「いかなる国に対しても諜報活動は行っていない」のならば、鈴木氏の身柄拘束を解くように全力で取り組むべきであるし、国民にもそれをアピールするはずである。そのアクションが無い時点で諜報行為があったことは明らかである。

 

 重要なことは日本でも「スパイ防止法」の制定を急ぐことである。日本は軍事的政策が制約されるなか、国際社会への影響力、外交において遅れを取らないためにも情報収集と諜報活動はやらざるを得ない。「日本人がスパイなどしない」という神話は存在しない。諜報活動をしない選択肢もない。むしろ日本国内に潜む外国人諜報員の存在が深刻である。武力行使という武器を実質的に持たないわが国が、外交戦略を組み立てる上で最重要に考えるべきは「情報収集」である。各国が集めるあらゆる情報よりも、より正確で最新でなければならない。

 

 私たちが知らないところで外国人諜報員が暗躍していることは当然のように認識しなければならない。それは国際常識であり、ドラマや映画の話ではない。政府内部、企業内部、自治体内部、マスコミ、一般社会に紛れ込んでいることは明らかである。その結果日本の外交が不利になり、国益を損なうのである。その反面、日本には各国大使館の武官、外務省国際情報局、内閣情報調査室、公安調査庁といった4つの組織が情報収集、諜報活動を展開していて、日本がスパイ行為を行っていないなどという「嘘」は通用しない。

 

 東アジアは中国の軍拡、北朝鮮の暴走、それに伴う韓国の政変、東南アジアから波及が予測されるテロ攻撃などにより諜報活動がより活発化するだろう。その流れに日本も遅れをとってはなるまい。今回の日本人拘束もその一環である。中国の軍拡に伴い、共産党指導部の内部情報を収集するために鈴木氏を利用したが失敗に終わった。これは外務省国際情報局の失態といえる。

 

終わり

 

古川 光輝

https://twitter.com/mitsuteru1127

 


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インテリジェンス・レポート No.1

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中国当局による日本人拘束についての報告 その1

 

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 日中友好団体幹部の日本人男性が北京にて中国当局に拘束された。中国外務省は「国家安全に危害を与えた容疑で調べている」と明らかにした。中国では「国家安全危害罪」といういわゆるスパイ防止法が存在する。国家分裂やスパイ活動、国家転覆といったものが対象である。ちなみに「国家転覆」というものは共産党国家、独裁国家特有のものであると考える。

 

報道各社がすでに伝えている通り、拘束された男性は30年に渡り日中交流に関わってきた人物であり、長年に渡り日本と中国の交流の中心人物であった。裏を返せば30年に渡って諜報活動に従事していたとは考え辛い。何かのタイミング、または中国当局に勘付かれてしまった何らかの要因があるに違いない。今回の日本人拘束の経緯を調査する中でその全容が見えてきた。今回の記事はその報告書である。

 

 拘束された男性は情報を全体的に分析すると、「日中青年交流協会」の理事長、鈴木英司氏であることがわかった。鈴木氏は中国の研究などで知られ、1983年以降約200回に渡り訪中をしていることが明らかになっている。1997年からは北京外国語大学の客員教授を務めており、中国により深く根ざしていることが窺い知れる。日中青年交流協会は2010年に設立され、青年交流の推進や植林事業、学生交流などを手がけていた。

 

 この経歴だけを見ると、とても日本から派遣された諜報員とは思えない。諜報員の条件として調査対象国に精通し、現地語が堪能なことが挙げられる。その要件はクリアしているがここまで長年に渡り日中交流の架け橋となった鈴木氏がなぜ中国当局にマークされ、拘束に至ったのか。

 

 注目すべきポイントは多々あるが、まず一つ目に次のことが挙げられる。鈴木氏は20164月から衆議院調査局・国家基本政策調査室の客員調査員として中国ならびに北朝鮮の調査分析の任務を政府から打診され承諾している。この事実は非常に重要である。しかしこれは日本側からすればリスクを背負うことになる。日中交流の中で中国政府、共産党関係者と交流することもあっただろう。その中で「日本の情報収集」を命じられている可能性もある。あるいはその危険性を防ぐために政府内に取り込んだと考えることもできる。

 

 続いてのポイントは植林事業に関するものである。日本が中国に対して植林事業を行った経緯は平成11年当時の小渕恵三首相が創設した「日中緑化交流基金」にまでさかのぼる。この時点で100億円を搬出している。この予算が了承され「日中植樹支援事業」の実現となった。管轄は外務省である。この予算が民間の日中交流団体に渡り、あらゆる事業に使われてきた。外務省は機を伺っていたのではないだろうか。日中関係が落ち着いている期間に信頼関係を構築し、日中対立が鮮明化した今、中国の国家情報を収集したい外務省国家情報局から鈴木氏に諜報を打診したと考える。そして外務省が諜報を続けるために植林事業の予算を計上し続け、植林事業を諜報のために利用した。それは鈴木氏が今年4月から政府で仕事をしていた時期と重なる。仮説では片付けられない重大な事実である。

 

 次回は以上のポイントを基にこの拘束事件の核心に迫る。日本政府は菅官房長官の会見の通り、スパイ行為があったことを認めていない。だが諜報活動があったことは否定できない。恐らく鈴木氏は中国内部の国家機密情報を探っていただろう。諜報員の基本的な考えとして、スパイ行為が発覚した場合、政府がその諜報員を助けることはありえない。諜報員もそのことを理解している。例えば日本国憲法が定める基本的人権の尊重などは諜報員に対して適用されない。それが常識である。菅官房長官の会見はある意味では、スパイ活動があったことを認める内容でもある。

 

その2に続く。

 

 

古川 光輝

https://twitter.com/mitsuteru1127

 


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【分析メモ】シリア情勢続報 インテリジェンス分析

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【情勢分析メモ】
ファイルNo.1-2 シリア情勢 国際/大阪発/重要人物発言

ロシアがシリア空爆を始めてから行き詰っていた対ISへの戦略に、様々な変化が見られる。
ロシアは対ISを名目に空爆を開始したが、実際の空爆地点は「シリア自由軍」などに向けられたものであり、ISが支配していない地域への空爆が含まれる。

ロシア空爆地域 AFPより
 ロシア空爆地域 AFPより

IS支配地域 CNNより
 IS支配地域 CNNより


対する有志連合を率いるアメリカはこれらの行動に非難の声をあげる。
なぜロシアによる軍事介入を防ぎきれなかったのだろうか。この裏にはどのような取引があったのだろうか。

我々日本人は、インテリジェンス、いわゆる外交交渉というものに相当疎い。
それは一部専門家が日本のために動いてくれている、という認識くらいで、興味もない分野なのかもしれない。
ただし、日本が今の平和な暮らしを継続させていくためには、国民が知らぬところでの外交交渉が全ての鍵を握る。

ただ一つ言えることは、絶対に外部には漏れない情報が世界中を支配しているということ。
これらのインテリジェンス情報は、決してマスコミや一般国民には流れない。流れるようなことがあれば、その当事者は命の危険もあるし、当事国は国益を損なうからである。

映画や小説で描かれるような世界が、現実に国際社会を舞台に繰り広げられている。
国家機密こそが国家を守る最大のカードであり、戦争をしないと決めた日本にとっては、非常に大事な要素を秘めている。それがインテリジェンスだといえる。

今回はシリア情勢を巡る一連の発言を元に、今後どのような展開になるのか分析し、皆さんと一緒に国際情勢を考えていきたい。


9月30日 米・ケリー国務長官/国連本部にて
「イスラム国などが活動していない場所を空爆しているのであれば、重大な懸念を抱く」

重大な懸念。この言葉はよく政治家が使う言葉だが、懸念の裏には対抗策があるのは当然だろう。これはロシアに対する警告と捉えるべきなのか?

9月30日 シリア反体制派「シリア国民連合」・フージャ議長/ロイター通信に対して
「ロシアの空爆はISに対してのものではない。アサドの延命を図ろうとするものに過ぎない」

反体制派を率いるトップの発言だが、これを読み解くと、反体制派とロシアには対話のチャンネルがないのではないか?対IS向けに空爆するのなら反体制派を空爆しないように彼らの拠点や作戦行動を把握しておくのが当然だ。そのためにはある程度の情報を反体制派はロシアに提供しなければならない。しかもアメリカからロシアにそのような情報は絶対に提供しないはずなので、反体制派とロシアには対話ルートがないと推測できる。

9月30日 ロシア国防省・コナシェンコフ少将/インターファクス通信から
「空爆は上空からの偵察と、シリア軍から入手したデータで確認後に実施された」

コナシェンコフ氏は国防省の報道官だが、クレムリンの声を伝える人物でもある。シリア軍から入手したデータ。このデータは何についてのデータなのか。根本的な問題はここだ。ISの情報なのか。反体制派の情報なのか。ここに気付いている人はいるのだろうか?そもそも提供されるデータが反体制派のものなら。そしてそれが外部に漏れたら大スクープである。そもそもシリア軍がISの情報を入手できる能力があるかどうか疑問であるし、ロシアが自らやれば済む話だ。このデータはかなり危険な香りがする。

10月1日 米・アーネスト大統領報道官/記者会見にて
「ロシアの空爆は、シリア反体制派に対する無差別の軍事作戦だ。内戦を長引かせるだけだ」

このような旨をロシア当局者には伝えているだろう。一般的にマスコミ向けや記者会見での要人の発言はすでに「鮮度が低い」状態だ。
すでに当事者間ではその発言をもとにした行動をしている。つまりメディアに掲載され、私たちが見るころには「事後報告」的な意味合いが強い。

10月1日 ロシア国防省・コナシェンコフ少将/記者会見にて
「武器庫などを攻撃し、山岳地帯にあった「イスラム国」の戦闘指揮所も破壊した」

このように戦果を述べる意味を考えたときに、攻撃した地域をあえて発言すること自体が疑問に残る。戦果とは何人の隊員を殺害し、ISの拠点を奪回した、などのことを指す。
ただ単に攻撃したことを伝えることなど、軍当局者はあまり行わない。ここにロシアの思惑が見え隠れする。

10月2日 オバマ大統領/記者会見にて
「ロシアの空爆は非生産的だ。シリアの米露の代理戦争にするつもりはない」

もはや代理戦争どころの話ではない。有志連合の国々を巻き込んでの世界大戦の様相だ。アメリカの戦略無き軍事作戦の責任は重大だ。
ロシアの軍事介入を引き起こしたのはアメリカと言ってもいい。手詰まりの状況の中、次の一手は考えているのだろうか。


その後の情勢は次の通り

10月2日
米、英、仏、独、トルコ、サウジアラビア、カタールの7カ国はロシア軍のシリア空爆を非難する7カ国共同宣言を公表。

10月4日
ロシア国防省は「イスラム国」の拠点10ヶ所を新たに空爆したと発表。だが実際は反体制派が活動する地域と判明。

10月4日
オバマ大統領が反体制派への武器供与ならびにISへの空爆強化を承認した。(ニューヨーク・タイムズ)

10月5日
ロシア軍はISの拠点9ヶ所を空爆したと発表。その際トルコの領空を侵犯したとトルコ外務省が抗議。NATOも非難声明を発表


情勢は非常に緊迫している。一触即発の雰囲気だ。
第三者的な視点で見れば、対話での解決は困難に見える。ただ、このような情勢を国際社会は何度も乗り越えてきた。
米露の対立はどの時代も、何度も繰り返してきた。だがその度にインテリジェンスの暗躍で最悪の事態を回避してきた。

恐らく今回も米露の交渉は水面下で進んでいるだろう。しかし、表向きには絶対にその情報は漏れない。
考えられる和平へのプロセスは一体どのようなものなのか。

両者とも共通するビジョンは、

シリアの安定
ISの掃討
大規模な戦争の回避

この3つに絞られる。しかし、シリアの安定にアサド大統領が必要かどうかの距離感は、お互い歩み寄るつもりはなさそうだ。
中東への影響力を両者とも手放したくないのが本音だ。世界の平和などは両者にとって後回しなのだ。まずシリアを巡っての争い、という見方が正しいのではないだろうか。

そのアサド大統領は無責任な発言を繰り返している。

アサド大統領
 アサド大統領


「ロシア軍による空爆は成功させなければ中東地域全体の破局につながる」

「有志連合の空爆は1年余り続いているのに、何の成果も出ていない」

「テロ掃討が唯一の方法だ。政治解決を実現するには、まず国家の安定が必要だ」

「シリアの将来を決めるのは外国の高官ではなくシリア国民だ」

シリアの混乱を招いたのはこのアサド本人である。全く自覚の無い発言で驚いた。シリアを難民大国にした大統領がこのような発言をして許されるわけがない。
国家として機能していないシリアの大統領に居座り続けるアサドに、一体どのような密約がロシアとの間にあるのだろうか。そこが今後の焦点になりそうだ。

そこを読み解くことができれば、シリア情勢を先読みすることができるかもしれない。
日本は国家安全保障局を中心に、インテリジェンス情報を収集できているだろうか。

いつまでもアメリカに頼る戦略を取っている場合ではない。軍事的な部分は日米同盟を基に協力すれば良いが、インテリジェンスに関しては独自外交を進めてほしい。
ロシアを説得するだけのものがあれば、十分国際社会で活躍できる資質が日本にはある。

今後も分析を続け、良質な記事を提供していくつもりだ。


分析者、執筆・Mitsuteru.odo
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