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日本メディアが報じない中東情勢Vol.2 (バイデン副大統領のイラク電撃訪問、ほか)

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~この記事の要点~

・バイデン副大統領の予告なしイラク訪問の真意
・ロシア、ラブロフ外相がアメリカにご立腹
・イエメンでアルカイダ掃討作戦が続く


皆さん、お疲れ様です。断片的ではありますが、次々と重要なニュースが飛び込んできますので、お伝えします。
学校や会社、教養として役立てていただければ幸いです。


バイデン副大統領のイラク訪問


これは完全に予告無しだったようで、メディアでは大きく伝えられていますね。(日本ではどうだったか?)
何かのタイミングでよくアメリカは予告無しの訪問をしますけれど、重要な議論の場合と、安全上の配慮もあるのでしょう。なんせイラクですからね。

バイデン副大統領

さて話し合われた内容については、やはり公式には発表されません。いくつかの観測によれば、

・IS掃討のための方針確認
・イラクでの宗派対立に関するデモの解決策の議論
・ISからモスルを奪還することの確認
などが議論された模様


さらにシリアがあのような状況ですから、恐らくイラクにも飛び火しないように、しっかり安全保障面で協力していくとの確約をしたのでしょう。
シリアでは有志連合軍とともにプランB(詳細は過去記事をご覧下さい→シリア和平は事実上崩壊 アメリカのプランB始動でシリアは再び混乱へ)の実施をほのめかしていますから、イラクでも支援を頼む、とイラク政権は思っていたのでしょう。
今後のイラクでの動きが、このバイデン氏の電撃訪問に紐付けられることでしょう。


ロシア、ラブロフ外相の発言

ラブロフ

ロシアの外相がご立腹です。何に怒っているかというと、アメリカに怒っています。
その理由は、停戦で合意した反体制派のアレッポからの退去が守られていない!とのことです。


シリア内戦にて停戦合意した際に(実際は何も停戦は守られていないが)米露の間で、アレッポから反体制派を退却することが約束されたのですが、それを守っていないことにご不満のようです。
この地域はヌスラ戦線も活動していて、ロシアが掲げる対テロ掃討作戦に支障がきたす、と主張しているようです。

アレッポ

どういうことかというと、ヌスラ戦線に空爆を実施しようとしても、反体制派が近くに残っているから、攻撃できない、または巻き添えを食らっても知らないぞ、ということ。
実際空爆を何回か実施して、反体制派に被害が確認されていますが、それはあくまでもヌスラ戦線やISを標的をしていて、反体制派を狙ったものではない。退却せず、近くに残っているお前たちが悪いんだ、と言っているのです。
反体制派を支援するアメリカに、その懸念を伝えたという構図です。


難しい問題です。停戦の内容が内容なだけに、反体制派にも責任があるとは言えますが、それを承知で空爆を実施するロシア、シリア軍も批判を浴びるのは当然です。
停戦の障害になっているのは両軍の意思だけでなく、過激派組織の存在もあるからです。ひとえに停戦を守れ、と言っても過激派の攻撃やテロを抑止するために空爆は実施するべきです。
今後も議論の余地はありそうですね。


イエメンでアルカイダ掃討作戦


サウジ軍を中心としたアラブ連合軍が、イエメン南部で積極的な掃討作戦を実施した模様です。
アデン・タエズを中心とした作戦で、ラバジェでの作戦はアルカイダの拠点にアパッチヘリを出撃させたようです。

アデン周囲地図

アパッチ

凄まじい攻勢です。先日もイエメンでアルカイダ戦闘員800名を殺害させていますから、アラブ連合は本気です。
しかしアルカイダの戦闘員は何人いるんだ!?という感じですね。
しかもアルカイダはこの攻撃の空爆の報復として、イエメンの交通局長を暗殺しています。反撃する力もまだあるということに驚きです。


このような大規模な戦闘がイエメンで行なわれていることを、日本人のどれだけの人が知っているのか...。
イエメンでは和平が進んでいるようですね。アラブ連合がアルカイダを攻撃して、あとはフーシが過激な行動に出ず、イランが何もしなければ、イエメン和平は合意に達するかもしれません。


ちなみに続報で、シリアで米露の停戦合意が発表されたとのニュースが飛び込んできました。
日本のマスコミも取り上げていますが、正しいものではありません。両者の発表に食い違いがあることを見逃してはいけません。


・アメリカの発表では停戦地域の限定はされていない、としている
・ロシアの発表ではラタキアで72時間、ダマスカスで24時間の停戦、としている


日本メディアは正しい情報を公正に発信して下さい。頼みます。
このニュースに関する詳細と分析は、別のニュースサイトでの執筆以来をいただいたので、そちらに書きます。またご報告させていただきます。
一日お疲れ様でした。


Mitsuteru.O


引用参考元
・CNN
・スプートニク
・アルジャジーラ
・アル・アラビアネット

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GCCで見えた中東の未来 キープレーヤーはどこの国?

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4月21日にサウジアラビアの首都リヤドで湾岸協力会議GCCが行なわれました。

GCC 構成図


シリアやイエメンなど、混乱が続く中東情勢で、地政学的に重要なプレーヤーである湾岸諸国がどのような出方をするのか、国際社会では開催前から注目されていました。
(ご存知のように日本では特集すらもお目にかからなかったが)

▼GCCに望む湾岸各国首脳と米オバマ大統領
GCC


▼会談を行なうオバマ米大統領とサウジのサルマン国王
オバマ サルマン


今回の会議や首脳会議での大きなポイントは大きく分けて2つあります。
まずはシリア情勢。そのなかでも大きな焦点となるのはアサド氏の処遇です。先日の本ブログ記事でもお伝えした通り(過去記事URL)、アサド氏の処遇次第で和平の行方は変わっていく情勢です。
そして、湾岸諸国とイランとの関係。特にサウジアラビアとの関係ですが、アメリカとの関係とも関連しており、相当なインテリジェンス戦争のさなかにあると考えます。
この2点に注目するとともに、今回のGCCで議論された内容を分析お伝えしていきたいと思います。


中東の歴史の転換点?イランの復活がカギに


GCC湾岸会議でも、最大の懸念であったイランへの対応が論点となりました。イランを語るうえで抑えておくべきポイントは、アメリカとの関係です。
現在イランはアサド政府軍の支援に回っています。他にもイエメンではフーシ、レバノンではヒズボラとの太いパイプを持っていて、知らぬ間に中東情勢のキープレーヤーとなっています。
そこでさらに混乱するのがアメリカとの核合意です。
アメリカとの接近で怒っているのがサウジアラビアです。アメリカとサウジアラビアといえば伝統的な友好国で、サウジからすればイランとの接近を良く思っていない。
イランはアサド支援で間違いなく、革命防衛隊もシリアに展開していますから、ロシアとともにアサド維持の思惑は一致しています。
国際的な代表プレーヤーである大国(アメリカ・ロシア)の影に隠れながら、サウジ・イランは睨み合っている恐ろしい現状なのです。


先ほど核合意と申し上げましたが、核兵器の「廃棄」ではなく、「凍結」をしたにすぎません。これまで完全廃棄を求めてきた欧米が、ウラン濃縮の権利を初めて認めたことになります。
高濃度プルトニウムの製造禁止、ウランの削減、査察の受け入れなど、イランはその責任を果たしたと、国際社会に訴えかけています。
この手法はシリアのアサドと同じで、アサドが化学兵器の廃棄に応じて大統領としての正当性を誇示したことと同じで、イランも核開発凍結で責任を果たしたつもりでいます。
その証拠にシリアへ積極介入を始めて、イエメンではフーシに肩入れをして、情勢を混乱させています。(どちらか一方の肯定はしないが、事実、混乱は生じている)


まとめると、中東のパワーバランスは転換点にあるといえます。アメリカと同盟関係を結んでいるイスラエル・サウジがイランを封じ込めてきた時代は終わりを迎えているのかも知れません。
もちろんイランはそれを根本から変えようとしています。それが核合意でアメリカ(オバマ?)に花を持たせ、外交的実績を築き上げることで、国際社会のイランへの疑念を払拭する機会になりました。
アメリカは当時、イランのアハムディネジャド大統領による保守強硬路線に苦労し、「ならず者国家」と呼んでいました。ただ、イランには大量破壊兵器がない、という情報機関(CIAか?)の分析もあり、
またそれが世界各国のインテリジェンスの中でも共通認識になり、(それはイランによる工作なのかも?)それが結果的にアメリカはイランを何とかコントロールできる、という結論に至ったのです。


それに加えてアメリカは中東への関与を控えています。オバマ大統領の在任中は、兵力の増派や空爆の数を増やすといったことはやるとしても、大規模な介入はやらないだろうという見方が一般的です。
見せかけの平和外交を利用して、イランは中東地域での復権のために、まずは核合意というカードを切ってきました。そして核合意とシリア介入のタイミングは絶妙でした。
長年の宿敵であるイスラエル・サウジは当然黙っていません。混乱に拍車を掛けることが予想されるイランの復権に、私は懐疑的な視点で見ています。


シリア和平最大の焦点、アサドの処遇


シリアに関してはもはやアサドの存在自体が、和平成立への障壁をなっており、アサドがシリアの権力に居座り続ける以上、シリアの未来はないと言えます。
アサド政権を守るロシア、イランは国際社会の圧力に屈することなく、あくまで正当性を誇示しながら、シリアの未来のために戦っている様子を見せています。
しかし、真相は自国の中東への関与を強めたいというビジョンからの行動であり、シリアの将来というのはいかにもロシアらしくない表現だと言えます。
そのロシアはパルミラ遺跡での地雷撤去などの実績を強調して国際社会にアピールしていますが、国際情勢を少しでも知っている方からすれば、半信半疑であると思います。


GCCではアサドの排除がシリア和平には絶対条件だ、ということで一致しています。(ロシア・イランが会議にいないのだから当然の結果)
こればかりは揺るぎようの無い事実なのですが、反体制派が折れることはまずないでしょう。それはアサドがシリア国内で行なってきた大量殺戮は歴史的な事実だからです。
よく日本でも聞かれる論理ですが、「対話をして」というのは本当に甘い。例えばまずありえないことですが、国会前で「アベ死ね」と叫んでいるデモ参加者に、自衛隊や警察が発砲して大量の死者が出たらどうなるか?
右派も左派も関係なく、首相の即刻退陣を求めるでしょう?それが武装化するかどうかはわかりませんが、シリアで起こっている内戦は国民の怒りが発端となったものであり、なにも中東で起こっていることだから異質なものであるということではないのです。


ただ、アサドをいかに排除させるかに関して言えば、非常に難しい。ロシアがアサドに肩入れしている以上、アサド政権軍は最後まで徹底抗戦をするでしょう。
すべてはアメリカの消極姿勢が原因であることはほぼ間違いないでしょう。(賛否両論あるが)介入を躊躇している間に、アサドはイランとヒズボラに協力を頼み、反体制派はヌスラ戦線と共にするようになった。
そしてISの出現。やっとのことで空爆を実施した有志連合も、地上作戦なしでの軍事的成果は乏しく、パルミラを占領されました。


アサドをどうすべきか。それはシリアを考えるうえで一番の重要な議題ですが、もはや欧米は諦めているのかもしれない。
先日シリアで議会選挙が行なわれましたが、アサドの支配下で行なわれたものだったので当然アサド政権の信任で圧勝でした。
それを国際社会は冷めた目で見ていますが、当の本人はこれでまた正当性をアピールできたと思っています。
シリアで選挙が行なわれアサドが勝つ。この事実は手法がどれだけ間違っているものであっても一つの事実なので、嫌な感じはしますよね。


そして気になるのは反体制派の力が弱まっている件です。政治的にもシリア和平に関するジュネーブでの交渉もうまいとはいえず、また軍事的にもISやアサド政権軍に敗北を重ねています。
このまま停戦が破棄され、和平も白紙に戻り、政府軍が攻勢に出る可能性は十分にあります。そこで持ちこたえることができるか。相手はロシア・イランがしっかりついています。反体制派は有志連合の空爆頼みですが、アメリカの消極姿勢では期待できない。(プランBはもしかすると見せかけだったのかも)
いずれにせよ反体制派に残された時間は少ないでしょう。最悪のケースは反体制派が軍事的に完全に敗北し、解体され、ロシア(プーチン)の意のままに動くシリアがまた出来上がることです。
そこでISが領土拡大のためにシリアに攻撃を仕掛けるでしょう。そうなったとき、事実上、ロシア対ISの構図が出来上がります。そのときにアメリカやサウジ、欧米各国はロシアの支援に回るのでしょうか?それも非常に興味深いことではありますが。


一応GCCに関する記事ですので、話し合われた内容や合意点をまとめておきます。

・湾岸諸国とアメリカはIS掃討で一致
・シリア和平にはアサドの排除が絶対条件
・イランと湾岸諸国の関係改善を模索
・GCCは中東介入において空爆以上の介入は実施しない
・アメリカによるGCCへの武器供与は継続
・GCCはイランとの対話の条件として、シリア・イラク・イエメンへの介入をやめることが前提条件


良くも悪くも、シリア和平における時間的猶予はもうありません。
どちらかが折れて和平に突き進むか、停戦が完全破棄されて再びシリアが崩壊するか。
一体、シリアや中東、世界はどこに向かうのでしょうか。


Mitsuteru.O

記事引用元
AFP
アルジャジーラ
アル・アラビアネット
ニューズウィーク

Mail:japan.in.the.world919@gmail.com

シリア和平は事実上崩壊 アメリカのプランB始動でシリアは再び混乱へ

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日本では悲しいことに、シリア和平に関する報道はあまり目にしませんが、どうやらシリア和平協議(ジュネーブ会議)は決裂する方向になりそうです。
停戦が実現されて、アサド政権と反体制派が同じテーブルでシリアの将来を話し合う、といったような夢物語はやはり実現しませんでした。
直近の経緯を以下にまとめました。普段日本で平和な毎日を過ごす我々にとって、信じられない事態がシリアで起こっているのです。
実際にこの世の中で行なわれていることです。ぜひご覧ください。


4月17日
国連特使が新たな和平案
反政府代表団筋の話として、国連特使が反政府交渉団に、移行期間中アサドは政権にとどまるも、基本的にはプロトコール的な役割に限定し、政治、軍事に関する実際の権限は3人の副大統領が遂行するとの案を示した
アサドはロシア通信とのインタビューで、現憲法には移行機関の規定はなく、現憲法下で移行機関を議論するのは憲法違反で論理的ではないと主張していた。
一方、米大統領府の中東問題担当官と、プーチン大統領の特使が、シリアの憲法問題について協議したとのこと。
彼らは先にロシア側がケリー長官に伝達した、憲法問題に関する案につき協議したが、米国は移行機関にできるだけ大幅な権限を与えることに固執している。

4月19日
シリア和平会議は凍結の観測
国連のシリア問題特使は18日、反政府代表団から、現在の交渉への参加を凍結するとの連絡を受けたことを確認した。
しかし、特使は反政府交渉団がジュネーブに引き続き滞在するとして、特使との間で技術的な問題の協議を続けるだろうと述べた。更に間接交渉という形が、柔軟性を確保するので、特使としては今後とも交渉を続けるつもりであるとした。
特使によれば、反政府派は政府軍による多くの停戦違反、(包囲された町への)人道物資搬入の阻害等に重大な危機感を有しているが、最大の問題は政府と反政府の根本的な対立点についての溝が埋まっていないことで、それは反政府が移行機関問題を重要視しているのに対して、政府側は現在の政府に反政府派もいれた拡大政府の維持に固執していること
国連特使は、双方の根本的対立が続く場合には、米国とロシアの介入を要請することになろうと語った。

4月20日
和平会議凍結が現実味
反政府代表団が政府軍の停戦違反、人道支援物資の搬入妨害に対して、出席を「延期する」としたが、 18日政府軍のイドリブの野菜市場等に対する空爆で多数の死傷者が出たことに足して、ハジャーブ反政府交渉調整官(元首相)が、このような状況では出席は「凍結」せざるを得ず、会議の失敗の可能性も出てきているとして、ミストラ特使は安保理と協議すべきであると、表明した経緯があった模様
この政府軍機による爆撃は、反政府派が、抗議への出席を延期するとしてこと及び、オバマとプーチンが電話会議をしたことに対する、シリア政府の回答であるとコメントしています。

4月22日
和平会議は失敗か
反政府派代表団は、政府側が繰り返し停戦違反をしていて、包囲された町に対する人道支援、拘禁者の問題等について何ら善意が示されていないとして、交渉調整官の支持で全員22日にはジュネーブを離れることになった模様。


なぜ和平が実現しないか(正確には和平協議を開催する環境が整わない)を、簡単に要約しますと、

・アサド政府軍、反体制派双方で、戦闘が続いている
・新政府移行機関の内容に反体制派が反発している
・アサド側は新政府の構想を、現アサド陣営と反体制派の両方を組み込む考え
・それに対して反体制派はアサドは絶対に排除しなければ、協議にも応じない考え


これに加えて、背後にアメリカ有志連合と、ロシア、イラン連合が双方を操っており、どのような出方になったとしても、双方どちらかに国益を損失する計算になります。
一歩も譲らない姿勢の両者と、影響力を行使する大国。シリアが泥沼化する理由は世界各国を巻き込んでいるからなのです。
ただの内戦なら今現在も調整役をやっている国連のような、第三者機関の仲介で、すぐに一時的な解決法は見出せるのですが、背後にいるのが本来は仲介に入らなければならないプレーヤーなのですから、この紛争の終わりはなかなか見えてこないわけであります。


そして、米露両者の対立は戦術的(軍事的)なものだけでなく、政治体制や新政府移行の流れにまで、介入しています。
むしろ、こちらのほうがシリア問題の本質的な部分であり、根本的な論点はアサドの処遇ということになります。
当たり前の話ですが、もしロシアとアサドが折れて、新政府意向にもアサドは一切関与しない、シリア新政府は完全にアサド抜きの体制にしましょうと表明すれば、和平は一気に進むでしょう。
問題は何が原因でシリアは内戦になったのか。反体制派の言い分からすればそういうことです。アサドの政治手法が現在のシリアの現状を招き、ISのようなに隙を与え、多くの国民が殺害された。
そのアサドが新政府移行に関与するなど考えられない、ということです。


▼シリア北西部イドリブの野菜市場での空爆

イドリブ空爆

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和平協議の崩壊の原因は、上記で示したように両者が折り合わないことにあるのですが、決定的な出来事としては4月18日のイドリブでの政府軍による空爆でしょうか。
反体制派のハジャーブ交渉調整官の発言にあるように、和平会議への「凍結」を示唆しています。
停戦違反は一方が攻撃を加えたら、受けた側は当然反撃をするので、両者に相当な覚悟と、ある意味での信頼がなくしては、実現しません。
特に中東によく見られるような、完全にコントロールされていない組織において、現場レベル(最前線の対立地帯)での停戦遵守は不可能でしょう。それはイエメンでも同じことです。
そして、このまま停戦が守られず、和平が崩壊すれば再びシリアは荒廃した土地になるでしょう。
その理由がアメリカの、ある重大決定にあるのです。


日本では全く報じられない
アメリカのプランB


米経済紙・ウォールストリートジャーナルが大スクープを報じました。
失望するのは日本のメディアです。全くこのニュースを取り上げない。とんでもない大スクープなのに。


4月14日
停戦失敗後のプランB浮上
WSJの報道によると、米国CIAが停戦破綻の場合の代替(プランB)として穏健反政府軍に対する、近代兵器を含む軍事援助を検討していると報じている。
責任者の発言として、CIA及び当該地域の同盟国は、プランBとして近代兵器の供与を検討しているとしているとのこと。その中には政府軍機や、その大砲に対抗するための武器も含んでいる。但し、CIAはその同盟国に対して、これらの兵器の供与は、停戦が破たんし、政治的解決が破たんした場合に限ると説明している。
さらにこの2月にCIAがプランBの実施について、オバマ大統領に圧力をかけていることが明らかになっている。


このニュースは本当に重大なニュースです。アメリカが本格的に軍事介入するサインです。
このような大ニュースを日本のマスコミは無視しています。重要性が理解できないのか、または無視しているかどちらかしか考えられません。
日本が中東に関与しないことが果たして正解なのかは、よく見極めなければいけませんが、国際政治のトレンドである、シリアの現状を知るうえで絶対に必要な情報だったはずです。
大きな影響力を保持しておきながら、その責任を果たしていない大手マスコミをここで非難します。


話を元に戻しますと、どうやらCIAがオバマ大統領に進言したとか。あなたが掲げる平和外交ではシリア問題の終結は無理だ、と言ったのではないでしょうか。
ここで重要なのはロシアの動きです。ロシアはシリアから撤退するとか、そのような報道がなされていましたが、実際にはロシア軍機がシリアに駐留しており、いつでも攻撃できる態勢が整っています。
その中でアメリカのプランBが発動されれば、事態はもう後戻りできなくなります。
有志連合軍や反体制派にも武器供与される(ロケット砲や携帯式ミサイルか?)ということは、単純に考えて地上での攻撃力が向上します。
アサド政府軍はロシア軍の航空攻撃が頼りですから、地上戦では劣勢に追い込まれるでしょう。アサドはすぐさまロシア・イランに反撃要請を行なうものと見られます。


そこで有志連合軍とロシア・イラン軍機の衝突・・・。これまでずっと危惧されてきた第3次世界大戦の様相になってしまいます。
現実に起こりうることなのに、日本は信じられないくらい他人事を装っています。
停戦破棄、和平の崩壊で、より深刻な国際問題になるのです。それに加えて、テロ攻撃にも備えなくてはならない。とんでもない事態です。


私自身の考えでは、アサドは即刻退陣し、新政府移行機関にも関与しないことで全てが解決されると、思っています。
アサドの正当性など、微塵もありません。

▼アサド政府軍が使用した化学兵器の被害

化学兵器


覚えていますか?平和的なデモを武力で弾圧し、2013年8月21日にはダマスカス郊外で化学兵器(国連調査団の発表でサリンと判明)を使用したことを。
アサドは否定していますが、国連調査団はシリア共和国防衛隊の第104師団の基地から発射されたことを明らかにしています。
国際社会は化学兵器の廃棄をアサドに求め、アサドがこれに応じたことから、雲行きが怪しくなりました。
つまり、アサドは国際社会の要請に応えて化学兵器の廃棄を実施した。この化学兵器の問題を取り上げることで、シリア内戦から目をそらせようとしたのです。
そして化学兵器を廃棄し、その責任を果たしたと誇張して、今後もシリアの指導者である正当性を得たと、自負しているわけです。
とんでもない論理ですが、それがまかり通っているのが現状で、反体制派はその部分を許せないのでしょう。


シリアを巡る戦闘で対立する構図をまとめますと、

アサド政府軍-反体制派
アメリカ-ロシア
サウジアラビア-イラン
有志連合(アラブ)-イラン
IS-その他全て
ヌスラ戦線-アサド政府軍、ヒズボラ


となります。単純に考えても混乱することがよくわかります。
そして、もう時間はありません。停戦破棄→和平決裂でアメリカのプランBが実行されれば、ロシアも当然ながら対抗措置を実施するでしょう。
そうなったとき、シリア国民はさらに命を落とすことになります。同時にシリアはさらに荒廃するでしょう。


日本のマスコミ・一部有識者は、戦争を無くそう、難民をどうにかしようと、さかんに言われておりますが、このシリア問題はどうでもいいのですか?
実際に起こっている問題を直視せず、何が平和なのでしょうか。その様な姿勢で平和を勝ち取ることはできるのでしょうか。
よく考えてみて下さい。


参考記事・引用元
AFP
アルジャジーラ
アルクドゥスアル・アラビ
アル・アラビアネット
ウォールストリートジャーナル
アジア経済研究所・ダルウィッシュ ホサム(長期化するシリア内戦-戦闘の激化と和平交渉の課題)


Mitsuteru.O
(日本国際問題マガジン責任者)


Mail:japan.in.the.world919@gmail.com


一筋縄ではいかない難民問題 EUの方針転換とテロの危険 解決策は難民輩出国家の安定

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シリア内戦や中東・アフリカの混乱をきっかけに世界中で難民の発生・流出が相次いでいます。
ヨーロッパ大陸を目指す難民は昨年だけで100万人。(UNHCR:国連高等難民弁務官事務所)今年に入ってからも増える一方で、すでに13万人(同、3月初旬)を超えているのが現状です。

ドイツ難民


難民
 

国際社会の重要な論点として、解決に向けて様々な策が取られていますが、難民問題は一向に解決しません。
ただ、各国の思惑は一致せず、そもそも難民自体を出している国家への批判よりも、受け入れを拒否している国々への批判が相次いでいることは何か違和感を感じます。


難民受け入れが国益に反する事態に
国民の生活を考えれば受け入れ拒否はやむ得ない

難民 トルコ


先日、EUとトルコが不法移民の強制送還について合意しました。
これは、トルコ経由でEU域内に不法入国した難民を、トルコに送還するというものです。
EUは当初、ドイツを中心に難民受け入れを積極的に受け入れてきました。しかし、難民による犯罪、テロの可能性から国内世論の批判を浴び、最近では難民受け入れに対して慎重な姿勢を見せています。

これまで受け入れを容認してきたEUが方針を転換したことで、難民問題は新たなステージに入りました。
なぜ難民受け入れを慎重に考え始めたのか。それは
・難民受け入れに反対しているEU各国右派の影響
・難民に紛れて、テロリストが不法入国する恐れ

この2点が大きなポイントになります。
難民を受け入れることでメリットとなる点は、労働力の確保が大きく取り上げられますが、これをはるかに超えてしまう”リスク”が難民受け入れには生じるのです。
テロリストが紛れ込むことなど、一昔前までは考えられませんでした。これまで受け入れに反対する理由としては、移民や難民に自国民と同等の保障、またはそれ以上の援助が行なわれることはおかしい!という主張でした。
しかし、時代は流れ「テロの脅威」が認識されてからは、「テロリスト侵入」の危険性が難民問題にも影を落とすようになりました。


ここで疑問点が浮かび上がります。国際世論が、難民を受け入れない国への批判に回っているのです。
本来なら、難民を発生させている国への批判が先なはずです。シリアは大国の代理戦争の様相を呈していますが、そもそも批判されるべきはアサド大統領を中心としたシリア政府です。
難民の発生と流出を食い止めるためには、当事国の安定が急務なのです。つまり内戦が起こっているシリアでの和平交渉を急がせること。


ロシアがシリアから撤退し、テロリスト以外の武装組織の停戦が履行されています。
チャンスは今しかありません。しかし、21日のロイター通信の記事によれば、依然として反体制派とアサド政権側の意見の隔たりは大きいとのことです。
難民対策で苦しんでいる欧州各国はシリア和平に介入すべきです。新政権に移行後の支援を約束するなどの手段はたくさんあるはずです


日本においても、他人事ではありません。
日本のすぐ近くには難民発生が予想される、”ある国”がありますよね。そう「北朝鮮」です。
北朝鮮は最近になり、ミサイル発射を繰り返し、挑発をエスカレートさせています。
もし、韓国・アメリカとの間で戦争が再開されたら、日本に難民が大量に押し寄せる事態になるでしょう。


そこで日本はどのような対応を取るべきか。
恐らく政府内部や外務省で想定はされているでしょうが、日本の世論はどう動くでしょうか。
そこでヒントになるのが現在の難民問題なのです。シリアやイラクから遠くヨーロッパに逃げてくる難民にどう対応すべきなのか。
遠い中東で起こっていることですが、将来の日本にも降りかかる問題であることを認識しておくべきだと思います。


mitsuteru.O


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