米国は米軍の撤退を発表以降もシリアとイラン、ロシアの動きを警戒しており。中東のパワーバランスを均等に保ちたいと考えている。そのプレーヤーとしてトルコというカードを選択した。
クルド人が拠点にするシリア北部から撤退した米国は「裏切り者」扱いを受けている。トルコがただちに攻めてくるのは目に見えていて、さらにそれに応戦するのがシリアのアサド政権軍という奇妙な構図になっている。1・米軍撤退、2・反体制派の弱体化、3・トルコの侵攻で、新たな局面に入ったシリア情勢は今後どのように落ち着くのか?終戦はいつなのか?
トルコへの制裁はパフォーマンスなのか?
今朝の読売朝刊では、「トランプ氏は会談後の共同記者会見で「中東の平和と繁栄に向けたエルドアン大統領の協力に感謝したい」と述べ、首脳間の良好な関係を強調したが、トルコのロシア製ミサイル導入問題などで課題も浮き彫りとなった」と指摘。シリア問題に関しては両者の考えは一致?米国は当初、トルコの侵攻に関して反発し、制裁を加えると言っていたはず。しかしそれは大嘘だったことがここで明らかになった。反発したことも、制裁を加えると言った事もすべてパフォーマンス。でもこれが外交というもの。密約が世界を動かす。
11月15日付け・読売オンライン https://www.yomiuri.co.jp/world/20191115-OYT1T50034/
オブライエン発言の真意は?
そういう意味では産経の記事は考えさせられる。「トランプ政権高官は12日の電話記者会見で「S400の導入問題は解決されなくてはならない」と指摘。オブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も11日、CBSテレビの報道番組に出演し、「トルコがS400を廃棄しないのであれば制裁の実施もあり得る」と警告した」
大統領補佐官がテレビでトルコへの制裁を示唆した事実は大きい。ロシア製のミサイルシステム導入は米国にとって最大の懸念事項であることは間違いないが、ここでも制裁をちらつかせるのはどうも嘘くさい。ただの脅しなのかどうかわからないが、米政権内の言動には注意すべし。
IS戦闘員の帰還を米国に取り付ける
CNNでは問題の元IS戦闘員帰還について報道。「トルコのエルドアン大統領は13日に米ホワイトハウスでトランプ大統領と会談し、ISISとの戦闘などについて協議していた。これを受けて米国側が渡航文書の発行を約束し、トルコが外国人戦闘員を送還する手続きに着手した」戦闘員の多くはほとんどが欧州出身なので拒んでいるのは欧州側なのだが、米国は渡航を容認。欧州各国からのトランプアレルギーがまた出てきそうだが、多くの捕虜を抱えるトルコからすれば死活問題であり、なおかつエルドアン再選のための施策なら、国際社会は止めることができない。
11月15日付け・CNN https://www.cnn.co.jp/world/35145449.html
トルコはEU正式加盟をあきらめたのか
EUの正式加盟国となっているトルコだが、1・キプロス沖の油田開発、2・シリア難民問題、3・IS戦闘員の帰還などの主要問題でEUとの関係は急速に悪化。この現状をロイターが指摘。「トルコとEUの関係は悪化しているが、トルコはEUの正式な加盟国候補。エルドアン大統領はワシントン訪問に先立ち、EUの決定を批判し、トルコは国際法に基づき自国の権利を行使していると主張した」「大統領は記者団に「EUよ、トルコはEUが今まで知っていたような国ではない。トルコはEUと交渉のテーブルについている。交渉が突然終わる可能性もある」と述べた」
かなり強烈なメッセージを送って、EUをけん制しているが、例えば日本の総理や外相がこんな発言をすることは絶対にない。だから国際情勢はおもしろい。
11月13日付け・ロイター https://jp.reuters.com/article/cyprus-turkey-eu-erdogan-idJPKBN1XN0AO?feedType=RSS&feedName=topNews
国際社会で生き残るべき手段は?
ここで疑問なのが、トルコは米国を取るのか、EUを取るのか、もしくはロシアを取るのか。この時代でどこかのグループに属するというのは古い考えかもしれない。そう考えたら日本は米国との同盟関係が強固。それは安倍政権で防衛力と抑止力が向上された結果なのだが、現代の国際社会で生き残る手段としての外交方針はどうすべきなのか。多角的に幅広く協力を得るべきなのか。それともどこかの国と強固な軍事同盟を結ぶべきなのか。安倍政権は少なくともこの両者をうまく取り込んでいると評価できる。今後の外交方針はどうしていくべきなのか。とても考えさせられる米・トルコ首脳会談であった。


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