12月22日、ロシア航空宇宙軍と中国人民解放軍は合同で、日本海と東シナ海の上空を戦略爆撃機6機で飛行した。韓国の防空識別圏に侵入し、韓国軍はスクランブル発進。日本への防空識別圏及び領空侵犯はなかったが、航空自衛隊もスクランブル発進を余儀なくされた。中露の軍事的接近とともに、次のステップである軍事同盟に発展する可能性も十分ある。


現実に中露軍事同盟はありえるのか


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まずは今回の案件について、航空自衛隊の対処を確認しておきたい。防衛省統合幕僚監部は日本海や東シナ海を飛行した中国とロシアの爆撃機計6機に航空自衛隊戦闘機が緊急発進。6機のうち、中露の爆撃機4機は東シナ海の長崎県の五島列島沖上空で合流し、尖閣諸島に向かって編隊飛行した。


尖閣諸島に向かった4機は北緯27度あたりで針路を変え、そのまま編隊を維持して沖縄県の沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡上空を通過した。4機はいったん太平洋に進出した後に引き返し、再び宮古海峡上空を抜けて北上した。空自がスクランブルしたのは中国軍のH6爆撃機4機と露軍のTU95爆撃機2機で、尖閣諸島に向けて飛行したのはH6とTU95のそれぞれ2機。(産経)


中露の軍事的接近ー。これは近年で何度もささやかれてきた案件だが、ここにきて急速に両者が接近していることがわかる。中露両国は定期的に首脳会談を行っており、12月2日にも定期会談を行った。その中で李克強首相は「中国側はロシア側と共に、協力の成果と経験をより良く総括し、中露の新時代における包括的・戦略的協力パートナーシップの持続的で健全な発展に新たな原動力を与えたい」とラブコールを送った。(人民網)


また両国は「弾道ミサイル及び運搬ロケット発射の相互通知に関する協定」を10年延長することを発表した。このことについて露ショイグ国防相は「これを基礎に両軍の実務協力を強化し、両国関係を一層深める」として両国の軍事態勢が本格的に接近していることがわかる。


プーチン大統領も年末恒例の国民対話の中で(今年はオンラインで行われたが)中国との軍事同盟について「理論的にはありえる」と発言した。「理論的」という意味はまさに中露の利害が一致するのは「対米国」というキーワードで繋がっているという意味だろう。理論的、という言葉の裏には心の底から中国を信頼していない、という意味にもなるだろう。


まさに対米戦略、という理論では一致するが、もしロシアに通告なしで軍事行動を起こしたり、香港や台湾で行き過ぎた対応をしたり、チベットやウイグルで非人道的行為をやめなければ...同盟はありえないと推測する。ロシアも中国との同盟について国際社会の理解など最初から得られると思っていないだろうが、好き勝手する中国を信頼して同盟など組めるはずがない、と米国も思っているだろう。


ロシアの極東政策はどう関連付けるか


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以上のこと以外にも、地政学的な意味合いがあることは言うまでもない。中国に関してはもはや説明不要だが、ロシアは最近になって極東地域での軍備調整を行っている。ロシアの国防省は12月1日に択捉島に地対空ミサイル防衛システム「S-300V4」を配備したことを明らかにした。ロシア側は軍事演習の一環で、実戦配備はしないと明言しているが、とても信じられるものではない。

「S-300V4」は射程距離400kmで弾道ミサイルと巡航ミサイル、航空機も撃ち落とせる。日本や米国に配備されている「パトリオット」とほぼ同様の能力を持つ。軍事演習の一環としているが、もし現実に配備されたとしたらー。


言うまでもなく択捉島は北方領土であり日本固有の領土である。今も交渉中であることを考えれば、日本は演習目的だったとしても強く抗議すべきである。それでなくても北海道とわずな距離にロシア軍の地対空ミサイルが配備されるなど、日本の国防上大変な問題である。米露、日露で戦争が起こることは今のところあり得ないが、米中戦争になった場合、この時点で中露同盟が成立していたら...日本にとって背筋の凍るシナリオである。


中露同盟、それは最悪のシナリオ


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米中戦争になった場合、日本は同盟国である米国を支持し、日本の国土、国民の命を守るために参戦する以外にない。(参戦と言えば誤解されるので、防衛のための戦いと言おう)構図としては日米vs中露になる。そしてオーストラリア、カナダが後方支援に入り、中露側にはイランが支援を行うだろう。そこで極東のロシアと東シナ海と南シナ海から中国海軍が接近。尖閣を目指して中国艦隊が突き進むことになるだろう。おそらくその時点で東南アジアの国々は日本支援に動くだろう。その時に安倍外交の功績が光ることになる。


中露同盟が実現するとき。それは中国が本気で米国と決戦する覚悟を決めたときになるだろう。中国一国で米国に戦争を仕掛けることは自殺行為であることを中国も理解している。ロシアという協力な武器を手に入れた瞬間、彼らは強気になるのだと思う。


いずれにせよ、今回の爆撃機による航行や、ロシア軍の極東進出は中露接近の一つのカードに過ぎない。これ以外にも水面下ではお互いの諜報員による情報収集や軍事戦略面での会合が必ず行われているはずである。


対米戦略といった意味では完全に利害が一致しているのだから、同盟に発展しても全く違和感はない。我々はそう覚悟しておいたほうが良いのかも知れない。しかしそれは日本にとっては確実に大打撃を被ることにある。そうならないためにも、安倍前首相が確保したロシアとの独自ルートを確保しておくべきだし、中国には毅然とした態度で臨み、隙を与えてはならない。スパイ防止法や外国人への土地買収規制など、まだまだ国内でもやれることはある。東アジア情勢は緊迫している。武漢熱で政治が止まっている時間はない。



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