ウクライナ戦争は戦闘激化と停戦交渉2正面の展開がなされ、残念ながらロシアがいまだに主導権を握っていると言わざるを得ません。停戦をちらつかせながら、軍事作戦は継続し目的を果たせる時期がくれば停戦に応じるという、あくまでプーチンの思い描くシナリオに沿ってロシアは容易には停戦に応じないはずです。


発表されない停戦協議の内容とは?

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停戦協議は断続的に行われ、この16日にも再開される。ウクライナ側交渉団のポドリャク大統領顧問はツイッターへの投稿で、「確実に妥協の余地がある」[1]と言っており少し兆しが見えてきているのかもしれない。マスコミ発表を伏せている協議内容ですが、基本的には以下の通りで、

●ウクライナの非軍事化、中立化
●クリミア半島、ルガンスク、ドネツクの併合

が基本的な枠組みなのでしょう。そして露国防省が制圧したと発表したヘルソン州。クリミアに隣接しており、一方的な住民投票で、親露派の「ヘルソン人民共和国」樹立を画策しているとの見方があります。[2]よってヘルソンも併合に組み込むことになると予想しています。


NATO加盟の可能性は消滅、あとは非軍事化と併合


ウクライナのNATO加盟に関しては、ゼレンスキーもNATO側も数々の発言にあるようにその可能性は消滅したと言えるでしょう。

ゼレンスキー大統領
「ウクライナはNATOに加盟していない。何年も前から門戸は開いていると聞いていたが、加盟できないとも聞いていた。これが事実であり、認識されなければならない」[3]
(16日の軍当局者とのビデオ会議で)

ウクライナの中立化とはすなわちNATOの加盟を許さない、ということでありロシア側はこの点ではクリアしたと言えるでしょう。併合の問題に関してはゼレンスキーが譲歩するかどうかによりますが、現状の様に数多くの死者数を出し、街も建物も破壊されつつあるウクライナ国内、国民の現状を考えれば
妥協するかも知れない。占領されたヘルソン以外の、ドネツク、ルガンスクに関しては割譲を認めるかも知れません。

交渉の障壁となっているのは、恐らく「非軍事化」でしょう。中立化はNATO非加盟でクリアしたとしても、では非軍事化したところで中立国としての国防の担保はどこが担うのか?プーチンはウクライナに傀儡政権を作ることが目標なので、ロシア軍をウクライナに駐留し続けることで、安全保障は保たれる、という理論でしょう。しかしそれはウクライナがこの戦争で「敗戦・降伏」した場合のみ通じる理論であり、その点から言えば徹底抗戦を続け士気の高いウクライナ国民と、国際社会のウクライナ支援が続く限り、この戦争は続くでしょう。

戦争が長期化すればするほど、ロシアの台所事情は苦しくなり、すなわちこの「非軍事化」の落としどころも変化するに違いありません。安全保障の担保はロシアだけでなく、ロシアを含めた米国、フランス、ドイツなどの複数国の枠組みでのウクライナの中立・非軍事化が現実的な選択肢になってくるのではないでしょうか。


中国の動きは絶対に監視しておくべき

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問題はその後の世界です。まずはウクライナ戦争を一刻も早く終結させるべきです。まずは一般国民の安全を最優先に考える。そしてその後の国際社会がどうなるか。キーとなるのは言うまでもなく中国です。今回のウクライナ戦争を中国は興味深く見守り、分析をしていることでしょう。現代戦争の戦い方はについてロシア軍の戦法を分析し、台湾、尖閣侵攻にどう生かすかを考えているでしょう。

そしてプーチン失脚後の世界。とりわけロシアを含めたユーラシア大陸の覇者として周近平は大きな顔をするはずです。ロシアの武器供与要請に中国が応じたようだ、と米国は発表し、サリバン米大統領補佐官は中国に警告しています。[4]それでなくてもロシアに対する経済制裁の抜け道になっているのは確実であり、ウクライナ戦争に加担しているのはもはや公の事実です。

その先に待っているのは悪夢の中露同盟であり、NATO西側諸国にはロシアが睨みをきかせ、中国はアジア太平洋で日米と激突する。国際情勢は新たなステージに足を踏み入れるでしょう。その時に訪れる世界的危機の舞台は日本です。ウクライナ戦争を通じていくら平和ボケしている日本人でも、戦争の悲惨さを身に染みて感じていることでしょう。考えるべきはその先で、日本の主敵は中国である。その意識を国民全員が共有しないと、ウクライナのように領土が破壊され、多くの日本人が死ぬことになるのです。いい加減に目を覚まさないといけません。迫る危機のその時代は今の若者が大人になった頃です。SNSやゲームに夢中になってスマホを見ている場合ではありません。

この記事のポイント
▼ウクライナの非軍事化、中立化、東南部3州の併合
▼占領されたヘルソン州も新露派に?
▼争点は「非軍事化」による国防の担保
▼中国の動向は要注視すべき
▼日本の主敵は中国、その時に備えるべき

:脚注:
[1]ロシアとの停戦交渉に妥協余地、16日も協議継続=ウクライナ高官
[2]ロシア、ミサイルでの無差別攻撃を拡大…南部ヘルソン州の「制圧」発表
[3]ウクライナ、NATO加盟は「できない」 ゼレンスキー大統領
[4]米、中国動向に警戒感 ロシアの支援依頼めぐり―高官会談7時間
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022031500956&g=int


参考記事
「ウクライナ戦争は対岸の火事ではない!今も進む北方領土での侵略を防ぎ、主権侵害を国民に周知せよ」
「日本にとって悪夢の中露軍事同盟の可能性」
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